院内学級と復学

 このページでは、米国での特別支援教育の概要をご紹介しています。
患児の診断の後には「学校の勉強はどうするか」という問題が生じます。通学中の学校側から聞かれるかも知れません。親は「診断されたばかりなのに?」と驚くことがあります。
 どうするかという問いに答えるとすれば、「親、家族、治療チーム全員が、がんの克服を信じている」ということになるでしょうか。希望を持ち続けることで、患児が元の学年に戻って学校生活を送ることができる可能性が高まるからです。
 治療中も勉強を続けることで、教室に戻る準備ができます。病院内に学校があれば、患児の状態と調整しながら勉強することができます。(訳注:米国では、期末試験、国家試験、SATACTなどの大学入学試験などの受験が可能な場合があります)
 患児の学びを達成させるには、親と学校が十分なコミュニケーションをとり、希望を持ち続けることです。

院内学級(米国の場合)

 小児を治療するがん専門病院の多くは、入院中も学校の勉強を続けられるよう、院内に教師を配置しています。
 ほとんどの学区で、5日以上入院するこどもを院内での勉強の対象としています。通常、院内の教師は1日1時間の個人指導を行います。医師から許可が出れば、グループ指導も行います。
 病院に専任の教師がいない場合は、その病院のソーシャルワーカー、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、コーディネートナースが学区に連絡をして、患児の担当教師の手配を依頼します。小規模な学区であれば、病院の近くの学校から教師を募ることもあります。

 長期入院であれば、親は院内学級を紹介され、主治医と教育プログラムを検討します。患児が院内での教育プログラムに登録されると、主治医は患児の入院前の学校に連絡し、宿題や課題のやり取りについての計画を立てます。そして、治療や患児の集中具合、病院のスケジュールに合わせて、授業時間などを調整します。

 院内の教師がすべての科目、特に中高生の専門科目などをカバーすることは難しいかもしれません。しかし、院内でも学校の単位を取得でき、患児は病院外の学校プログラムに参加することもできます。退院できるようになれば、医療者はホームティーチングや学校に戻る手配をサポートします。

 高校生の専門科目の場合、いくつかの選択肢があります。まず、学校がその教科専門のチューター(家庭教師)を派遣する場合です。学区によっては、ベテランの教師がいない場合もあります。その時は、親と学校が協力し、地元の大学やコミュニティカレッジ(2年制大学)、他の高校からチューターを手配することもできます。
その学区で生徒が必要とする教育サービスが無い場合、学区から親にチューター費用が払い戻される場合があります(訳注:公立学校は主に住民の固定資産税で運営されています)。払い戻しがあれば、その生徒は学期ではカリキュラムのいずれか(例えば、化学、一般教養としての英国文学など)を受けず、夏の間にコミュニティカレッジで追加として受けることができます。

ホームバウンドインストラクション・ホームインストラクション(派遣指導

 患児が退院しても、健康上の理由から学校に通うことができない場合、学区では、定期的に患児の自宅に来る教師を手配します。生徒が3~4週間学校を休んでいれば、派遣指導を受ける資格となります。(訳注:義務教育期間中、様々な理由で学校に行けないこどもに対し、教師を家庭に派遣することが法律で定められています)

 患児が派遣指導に登録されると、派遣指導の教師は、患児の学校の教師と連絡を取り、患児が医学的に適切な時期に復学する準備として、宿題や課題が与えられているかを確認します。
 親は、学校の教師と一緒に、派遣指導の計画を確認します。患児の病気や治療に関する情報を提供して、それに応じた計画を立てるのです。また、学校の担任の教師は、患児の病院の看護師やソーシャルワーカーと直接連絡をして、具体的な質問をしたり、継続的に必要に応じた情報提供を受けます。
 自宅での指導は、通院に合わせて、通常は週に2~3回、1回につき1時間以上のスケジュールで行われます。病院が近くにある場合は、患児は入院中も同じ派遣指導の教員と勉強を続けることもあります。

 派遣指導は、学校よりも授業時間は短くなります。しかし、ほとんどの生徒は、学年に在籍するために必要な単位を取得することができます。そして、患児が学校に戻ることになれば、派遣指導の教師は再び登校できるよう導きます。

復学

 長期に渡る欠席から学校への復帰は、患児の主治医が許可します。主治医が「学校に戻っても大丈夫」と判断した時点でも、患児が抗がん剤治療を受けている可能性もあります。治療中の患児は、クラスメイトから何かをうつされたり、感染症にかかる可能性があります。しかし、学校で他のこどもたちと一緒に過ごすことは、患児にとって大変有益です。

 家族の中には(がんや治療による衰弱が激しい場合は特に) 徐々に復帰することを希望する人もいます。例えば「1週間は1科目だけにして、その後1週間は半日だけ出席」のようにしながら、通常の学校生活に戻ることを希望するかも知れません。

日本版更新:20212
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