年齢ごとの発育と病気による影響

INDEX

子どもは年齢によって、物事の感じ方、他人との交わり方、あるいは考え方が変化します。しかしながら、子どもによって成長の具合が違うので、こうした変化が生じるタイミングは少しずつ異なります。しかし、ある程度の年齢の幅で区切れば類似点があります。これから述べるガイドラインは、子どもたちががんのことをどのように理解するか、そして治療中にはどのようなことが起こるのか、またその時点の子どもの能力に合わせてどのように説明すべきなのかについて解説します。

がんとその治療は、小児および10代の少年少女の正常な発育過程に影響を与えることがあります。たとえば、以前は友達の家や外での活動に喜んで出かけていた子が、今ではあなたと一緒に家で過ごしたがったり、病室から帰らないよう頼んだりするようになっているかもしれません。お子さんが診断を受ける前に比べると、あなた自身もまた、お子さんの近くにいたい、離れていることが心配だなどと感じるでしょう。これは、がんという脅威がもたらす正常な反応なのです。こうした変化は普通一時的なもので、お子さんと両親の間に強い心の絆が存在する証(あかし)なのです。がんのような外部からの脅威があると、親子の距離が近くなることがよくあります。最も苦しい時期を過ぎれば、子どもの行動は病気になる以前に近いところまで戻ると期待できます。

このページでは、まず1項目で、それぞれの年齢で子どもたちが経験する感情について説明します。続いて2項目では社会との関係について、3項目ではそれぞれの年齢層の子どもたちがどのように考えるかを説明します。最後に4項目ではがんと闘っている子どもの成長と発育を、親たちがどのように支援できるかを説明しています。

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未就学児(3~5歳程度)のお子さんについて

感情面:(お子さんがどのように状況を理解し、どのような気持ちで対処するかについて)

  • お医者さんと自分(患者さん)のような、自分が今置かれている状況を反映した「ごっこ遊び」をします。
  • もっと幼い子は、今の状況と空想の世界との区別をつけることが困難です。
  • 感情を表現する言葉を覚えますが、違う感情を的確に表現するのには助けが必要です。
  • 身体に傷ができることや痛いことを怖がることが多く、治療中は機嫌が悪くなります。
  • 病院のようなこわい場所に一人でいることを嫌がります。

社会面:(お子さんにとって他人との関係で重要なことについて)

  • 親からの自立を見せ始めます。
  • 一人一人で遊ぶのではなく、他の子どもたちと一緒に遊ぶことを覚えます。
  • 順番に何かをしたり、分け合ったりすることを学びます。
  • 他の人のまねをします。
  • よく知らない怖い場所では、親や知っている大人と一緒にいると機嫌が良いです。
  • 子どもを本当に落ち着かせることができるのは一人だけです。

思考面:(お子さんがどのようにものを考えるのか、がんのことと自分の周りの世界をどのように理解するかについて)

  • 質問をたくさんします。
  • 簡単な説明ならば理解できます。
  • 何段階かにわたる指示や複雑な説明を理解することは困難です。
  • 罰を受けないためにルールに従います。だから、自分が何か悪いことをしたために病気になったと信じているかもしれません。
  • がんの知識はわずかです。
  • 死への理解もわずかで、死というものが永遠に続き、引き返すことができないものであることがわかっていません。
  • 時間の概念については少しは解りますが、ほとんどは決まった出来事の中での理解であり、何時何分や何月という正確な時間の観念はありません。
  • 治るために苦しい思いをして治療を受けなければならないという理由をほとんど理解できていません。
  • 身体的な心地良さと、恐れや不安を感じないことが重要です。

この年代の子どもの治療と発育のためにサポートできること:

  • 何か悪いことをしたから病気になったのではないということを教えてあげてください。
  • 簡単な言葉や本、絵など、何か説明しやすいもので自分の病気のことを説明してあげてください。
  • 毎日の日課の中で、受けなければならない処置や治療などがいつ行われるかについてお子さんに教えてあげましょう(例えば、このTV番組が終わった後で、朝起きたら、などのように)。
  • 「水とジュースのどちらが欲しい?」というように、お子さんに選択肢から選ばせてあげましょう。ただし、医学的な手当てについては、お子さんが選びたがらない選択肢を示さないように気をつけましょう。(例えば、ほとんどの子どもは「薬を飲む」という選択肢は絶対に選びません。)
  • お子さんにとっての「安全な基地」になってあげてください。お子さんから安心できると信頼されている大人(あなたたち夫婦や他の親族など)ができる限り付き添うようにしてください。
  • できれば、決まった日課を設けてあげてください。
  • できる時には、遊びやその他の活動に参加するようにお子さんを励ましてください。おもちゃや面白い遊びで元気づけ、気晴らしできるようにしてあげましょう。治療を受ける時は慰めてあげてください。
  • 安全な医療器具で遊ぶことや喜びを表すことのできる遊びを勧めてください。そして、処置の痛みや知らない人(医療スタッフ)に対する怖さに慣れる手伝いをしてあげましょう。
  • 通常通りのしつけを続けてください。患児が使ったコップを流しへ下げさせることや、病院にお見舞いにきた兄弟姉妹とおもちゃを譲り合って使うことなどでしつけができます。

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小学生(6~12歳程度)のお子さんについて

感情面:(お子さんがどのように状況を理解し、どのような気持ちで対処するかについて)

  • 低学年の子はおばけや暗闇などを怖がりますが、高学年になると、学校やその他の活動に戻れるのかどうかという問題が心配事になります。
  • 感情を表現できる語彙を身につけます。
  • つらいときに側にいる看護師などの医療スタッフを頼りにするようになります。
  • 憂うつな時や気分が悪い時にふさぎこんでしまう子もいれば、逆に攻撃的になったり、嘘をついたり、いじめたりする子もいます。病気の子では、ふさぎこんでひきこもる場合が多いようです。

社会面:(お子さんにとって他人との関係で重要なことについて)

  • 友人関係を大事にしますが、親を頼る気持ちもまだ強くあります。
  • 社会性を身につけたり学習したりする上で学校が重要な部分を占めてきます。
  • 小学校から中学校への進学時は子どもにとって難しい時期です。というのも、学校が変わったり、思春期に入ったりといった様々な変化が一度に起こるからです。病気のせいで学校を離れている子どもにとってはつらいことで、友達を作ることや学校生活に参加できないことが、取り残されて遅れをとっているように感じます。
  • 運動することは多くの子どもにとって重要です。病気のために運動ができないと、自分が疎外されたように感じます。

思考面:(お子さんがどのようにものを考えるのか、がんのことと自分の周りの世界をどのように理解するかについて)

  • テレビ番組や祖父母などから得た知識で、がんが深刻で怖い病気であることを知ります。
  • 死の知識が深まります。低学年の子は、死が永遠のものであることはわかりますが、運が良い人は死から逃れられる、あるいは若者やその家族は死なないものだと思っています。高学年になると、死が永遠のもので、誰にでもいつかは訪れるものだと理解します。
  • 何らかの行為と結果の間の因果関係について理解し始めます。
  • 時間の観念が発達します。
  • 年齢が上がるに従って注意力を保てる時間が長くなりますが、複数の指示や説明を理解するのはまだ難しい状態にあります。
  • 具体的なことや言葉で説明できることはわかりますが、抽象的なことを理解するのはまだ難しいです。

この年代の子どもの治療と発育のためにサポートできること:

  • 身近にがんで亡くなった方がいる場合は、がんと呼ばれる病気はたくさんあり、子どものがんと全く同じではないことを説明してあげましょう。お子さんの病気について簡単に説明した上で、今は多くの小児がんが治ることを話してあげてください。絵、本、ゲームなどが役立つこともあります。お子さんの質問に自分でうまく答えられない場合には、医師や看護師に質問するように伝え、医師や看護師から答えてもらうようにしましましょう。
  • その子の状況に応じて、友だちとの付き合い、学校の勉強、通学、兄弟姉妹と遊ぶことや、スポーツの試合に行くこと(観戦だけでも良いです)などを勧めてみましょう。
  • 治療について、いつ、何が行われるのかを簡単に説明しましょう。
  • 痛みを伴うことや未知のことへの怖れにうまく対応できるように、可能であれば安全な医療器具で遊ばせ、遊びながら気晴らしができるようにしてあげてください。
  • 治療が済むたびにちょっとしたご褒美をあげられるように、治療の各ステップ(あるいは治療日程だけでも可)を記入したカレンダーを壁に貼りましょう。ご褒美としては、例えば、化学療法が終わったらアイスクリームを食べられる、生検が終わったらマンガが読めるということのほか、化学療法や放射線治療をした日にはカレンダーにシールを貼るなどの方法があります。
  • お子さんに対するしつけや禁止事項を変えないでください。以前と同じように家の手伝いをしたり、病院で学校の宿題を終わらせたりするようにお子さんを導きましょう。このことは、お子さんが治療の最中であっても、やがては元の生活に戻るという前向きなメッセージを伝えることにもなります。

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中高生(13~18歳程度)のお子さんについて

感情面:(お子さんがどのように状況を理解し、どのような気持ちで対処するかについて)

  • 自分の感情を表現する語彙が豊富になります。
  • 友だちへの信頼が増し、親への依存が減ります。
  • 自分の気持ちを隠して、親を傷つけないようにしようとします。
  • 医療スタッフと親密な関係を築き、親よりも医療スタッフのアドバイスを尊重します。

社会面:(お子さんにとって他人との関係で重要なことについて)

  • 友だちに受け入れられて仲間になることを大事に思います。
  • 身体や外見の変化が気になり、それが友だちにどのように見られるかを気にします。
  • 好きな異性と真剣に付き合いたいと願います。その交際を続けることが最大の関心事で、自分の外見や性に関心を持ちます。

思考面:(お子さんがどのようにものを考えるのか、がんのことと自分の周りの世界をどのように理解するかについて)

  • 学校やスポーツ、友だちとの付き合いなどの日常生活にがんが及ぼす影響について心配します。
  • 治療に関する意思決定に加わりたがります。
  • この年代の子どもたちは理論的な理由づけができるようになり、がんが自分の現在と未来に及ぼす影響についてより深く考えます。
  • 思考は深まりますが、一方で複雑な問題を解決した経験に乏しいので、治療を決めることやその決定に従うことについては両親が深く関与することが重要です。
  • 10代の子たちは、死が永遠のもので誰にでもいつかは訪れるものだと気づきます。彼らはがんの診断を受けるまでは自分がどんな人生を送るかを想像していたはずであり、がんのせいで自分の目標や夢が妨げられるのではないかと思い悩んでいます。10代の子たちは死についての考えがさらに深くなり、自分が死ぬ前に世の中に何らかの足跡を残せるかどうかを特に心配します。

この年代の子どもの治療と発育のためにサポートできること:

  • 10代のお子さんから尋ねられた時には、治療や副作用について率直に話してあげましょう。
  • 元気がある時には、メールや電話、手紙などで友人や好きな異性と連絡を取り合うように勧めてあげましょう。
  • 学校の宿題を終わらせるように励ましましょう。
  • お子さんの友人や好きな異性が家や病院にお見舞いに来た時には、その子たちが気分よく過ごせるように心配りをしましょう。
  • がんや自分の身体についてどう感じているのか、あなたや信頼できる友人、専門の治療スタッフに話すように勧めてあげましょう。お子さんがこのような話をしたがらない場合には、自分の気持ちを文章や絵、音楽などで表現するように勧めましょう。10代のがん患者向けのウェブサイトなども手助けとなります。
  • 10代のお子さんに対してはできる限りプライバシーに配慮してあげましょう。医師や看護師にも同じことをお願いしてください。
  • 薬を処方通りに服用したかどうかというような非常に重要なことには注意を払ってください。それ以外のさほど重要ではないこと(例えば聞く音楽の種類や友人との過ごし方など)については口出しをしないようにしましょう。
  • 生と死についてはお子さんと率直に話し合ってください。間違った認識があれば訂正しましょう。何かを残したいとお子さんが思い悩んでいる場合には、そのための計画をお子さんと一緒に立ててあげてください。
  • お子さんに対するしつけや禁止事項を変えないでください。以前と同じように家の手伝いをしたり、病院で学校の宿題を終わらせたりするようにお子さんに求めても問題ありません。お子さんが治療の最中でも、やがては元の生活に戻るという前向きなメッセージを伝えることになります。

親御さんは自分が「過保護」にしているのではないかと悩むことがあります。通学や学校の宿題、友だち付き合い、運動などの日々の活動を続けるようにお子さんを励ますことは大切ですが、病気でなければ親が手助けしないような日常のことを親御さんが助けても問題ありません。あなたがしてあげるべきなのか、あるいはお子さんが自分ですべきなのかを判断するのは難しいことです。どこまでが許されるのか、お子さんと意見が対立することもあるでしょう。お子さんが自分で十分にできることまでやってあげるのが良いのか、学校や友人の家に行くような決まったことはお子さんに任せた方が良いのか、判断に迷う場合には担当の治療チームの誰かに相談しましょう。

 

行動面の問題

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