胚細胞腫瘍の治療

INDEX

胚細胞腫瘍をいかに効果的に治療するか決める際、医師は多くの要素を考慮します。これらの要素は良い結果が得られるかどうかの見通しにも影響します。

腫瘍の位置: 治癒の可能性は腫瘍の部位によって変わります。性腺の胚細胞腫瘍は性腺以外の場所にある(性腺外)胚細胞腫瘍より予後が良好です。縦隔の胚細胞腫瘍は通常小さいうちには症状が出ないため、診断時には治療が困難です。

細胞の性質: 良性の奇形腫は手術で非常に良好な予後が得られ/ます。悪性腫瘍には、未熟奇形腫や、悪性細胞を含むその他の胚細胞腫瘍が含まれます。悪性腫瘍を治療するためには一般的に手術化学療法を行う必要があります。このような悪性のタイプには以下のものがあります。

  • 卵黄嚢腫瘍
  • 胎児性癌
  • 未分化胚腫
  • 精上皮腫
  • 絨毛癌

腫瘍細胞マーカー: 多くの腫瘍は特定のタンパク質を産生し、その量は経時的に血液中で測定することができます。このようなタンパク質は、腫瘍細胞の増減や治療効果を測る目安にすることができるため、腫瘍マーカーと呼ばれます。胚細胞腫瘍の腫瘍マーカーは以下の2つのタンパク質です。

  • アルファ-フェトプロテイン(AFP)
  • ベータ・ヒト絨毛性ゴナドトロピン(bhCG)

これらの腫瘍マーカーが手術や化学療法の後で低下する割合は予後因子として認められるようになっています。

病期(進行度): 原発部位から身体の他部位まで腫瘍が広がった患児にはより多くの治療が必要となり、良好な結果が得られない可能性があります。

診断時の年齢: 15歳以上の患者(あるいは一般的に思春期以降に診断された患者)はより幼少の患児よりも結果が良好でない可能性があります。

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胚細胞腫瘍の治療法

胚細胞腫瘍の初期治療には2つの方法があります。

  • 腫瘍を取り除く手術
  • 残っている腫瘍細胞を破壊する化学療法

手術

腫瘍の位置が手術の必要性や可能性に影響します。手術が可能な場合の第一選択は全ての腫瘍を取り除くことです。完全な外科的切除を行えば、ほとんどの奇形腫と未熟奇形腫は治すことができます。また、一部の精巣や卵巣の悪性胚細胞腫瘍も手術単独で治せる場合があります。精巣の胚細胞腫瘍は手術が成功すれば化学療法を必要としないことが多いです。腫瘍細胞がリンパ節に浸潤しておらず、腫瘍マーカーであるタンパク質の数値が手術後に正常値まで下がった場合には、化学療法は必要ありません。

より年長の患者においては、腫瘍が広がっていないかどうかを判断するために腹部のリンパ節生検が必要になることがあります。

化学療法

抗がん剤を使用することで、一部の胚細胞腫瘍を治療することに成功しています。標準的な化学療法は、以下の薬剤を含むPEB療法という計4回の治療です。

  • シスプラチン(P)
  • エトポシド(E)
  • ブレオマイシン(B)

カルボプラチンやイホスファミドという抗がん剤が使用される場合もあります。

手術で精巣腫瘍を完全に切除できた患者は、化学療法をせずに経過観察を行います。腫瘍マーカーの数値が正常に戻らないか手術後のフォローアップ期間に再び上昇した場合には、その時点で化学療法を追加すれば結果は良好です。手術で完全に切除できなかった腫瘍細胞を破壊することができるので、これは「救援療法(サルベージ療法)」と呼ばれることがあります。

他の悪性胚細胞腫瘍の患者も計4回のPEB療法を受けます。治療を行いながら腫瘍マーカーの数値を確認します。目的は可能な限り腫瘍を小さくすることです。その後で残っている腫瘍を全て切除することを試みます。

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臨床研究(臨床試験)

米国では、がんの患児の大部分が臨床研究(臨床試験)に参加しています。このような参加率の高さは小児がんの治癒率を改善するのに不可欠です。 研究者は、治療法を改善し、かつ、がんの性格とその原因について理解を深めるために様々な研究を計画します。臨床試験は慎重に審査され、誰でも登録できるようになる前に正式な科学的手順を経て承認されなければなりません。登録中の臨床試験で、お子さんに“適格性がある”場合には、参加するように依頼されるかもしれません。複数の研究に参加するように依頼されることもあります。

特定の研究への適格性があるかどうかは、年齢、がんの部位、病気の広がりやその他の情報によって判断されます。通常、科学的に有効な研究を行うために研究者は研究対象者が的確かどうか厳密に調べなければなりません。さらに研究者は研究の間、厳密に同じ制約に従わなければなりません。

患児に複数の研究(臨床試験)への適格性がある場合、主治医はそのことについてインフォームド・コンセントのための面談(カンファランスと呼びます)を開いて親御さんと話し合います。親御さんがお子さんを研究に参加させたいと思っているか否かに関係なく、主治医は参加することによる潜在的なリスクや、親御さんが決断するために必要なその他の情報について説明してくれます。研究に参加するかどうかをいつでも選択することができます。

お子さんを研究に参加させることを選んだ場合、主治医はその研究の結果からどのような情報を得ることができるのかを説明します。研究の最終的な結果は、一般の方および他の研究者に知らせるために公表されます。どのような研究においても個人が特定されるような情報は公表されません。

様々な種類の研究について詳しく知るためには、このウェブサイトの臨床研究(臨床試験)の項目を参照してください。

米国版の更新時期: 2011年9月
日本版の更新時期: 2012年3月

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