父親の思い

わが子ががんと診断されたら、普通の父親なら怒りか無力感のどちらかを感じると思います。父親は家族を守るものだと思われています。もし強盗や泥棒、殺人者などが門の外に潜んでいて私たちの家庭に侵入したなら、私は即座に対処することでしょう。父親には、全ての侵入者から自分の城を守り、子どもの安全を守るためには自分達の命を投げ打ちさえするという強い思いがあるのです。

しかし、恐ろしい病気は下水溝の隙間から私たちの生活に入り込んだスパイや暗殺者のように、不意にやってきます。その時父親は、自分の娘が喉にナイフを突き付けられて部屋で捕らわれの身となっていることを突然に知らされ、役にも立たない武器を持って馬鹿みたいに立っているように感じることでしょう。

娘ががんの診断を受けた瞬間、わが子を救うために、妻と私は別々に旅立ちました。つまり、2人の異なる人間が同じ使命を持って互いを補い合う方法をとったのです。母親の担当は「安らぎ」でした。彼女は、私たちの赤ん坊や家族が心地よく過ごせるようにし、見舞客の気持ちや考えを受け止め、自分自身の健康を犠牲にしてでも1日24時間喜んで務めを果たしました。一方、私の担当は実務でした。診断は正確にはどのようなものなのか?完治する確率はどのくらいなのか?手術の結果はどうなるのか?私たちはどこに泊まるのか?保険会社の人にどう対応するか?飼い犬には誰が餌をやるのか?などです。

面白いことに、医師は私に医学書を読まないようにと言いました。現在の治療法と診療が日々進化しているのに対して、書籍は発行された日からどんどん時代遅れになっていくからです。そこで私は病院内の図書室に行き、最新の医学雑誌や抄録を読むようにしました。その中に良いニュースがありました。また、私は医師の会議で厳しい質問をかなりしました。さらに、私は定期的に現状を知らせるニュースレターを作成し、何度も同じ話をしなくてもすむようにしました。これはいいアイデアでした。

一方、妻はベッドのそばに付き添って、娘が眠るのを見守りました。廊下のベンチに腰をかけ、見舞客、看護師、医師、通りすがりの人、他の患者、清掃スタッフ、技師、保守管理スタッフ、ピザの配達人といった人たちの相手をしているうちに、妻はとうとう疲れ果ててしまい、私たちは計画を立てなければならないということに気づきました。

  • 自分たちにできることをきちんと調べましょう。
    妻が看護の役割を担い、それ以外の実務を私が引き受けました。平日は彼女が病院で寝泊まりして娘の毎日の闘病生活を見守り、その間は私が家にいて母親役を務めました。
  • 友人にも手伝ってもらいましょう。
    何か助けが必要なことがあるかと聞かれたら、具体的な要望を伝えましょう。私たちの友人は、洗濯、芝刈り、家の片づけ、他の子どもたちの世話(ハロウィーンのお祭り、プール、外泊に連れていくことなど)をしてくれました。
  • 良いことは続け、悪いことは無視するようにしましょう。
    妻が1週間ずっと病院に詰めている間、他の子どもたちは私と一緒に寝たり食事をしたりテレビを見たりして、大抵はいい子でいてくれました。できるだけいつも通りに楽しく過ごすことが私たちの仕事でした。
  • 時々は休みましょう。
    いったん計画を立てたら、患児である娘に良い結果をもたらすようにしなくてはなりません。患児である娘がそばにいない時には泣いても構わないと妻に伝えていましたが、病室にいる時はいつも元気に明るくふるまう必要がありました。患児の身のまわりの世話は欠かせないので、睡眠や食事をとったりシャワーを浴びたりする時間を作って、良い状態で戻りましょう。私は週末に病院に行き、付き添いを交代して、妻を休ませていました。
  • 新しい生活が現実であることを受け入れましょう。
    新しい日常生活から生じた出来事の中で、最も奇妙に感じられたことのひとつは、信じられないほど平穏な気持ちでいられることでした。自分自身の価値観が変化し、庭の雑草を抜くことや請求書の処理などは苦にならなくなり、病院で過ごす時間が何よりも大切なものとなりました。最も無力感を感じたとき、私は神の存在を一番強く感じました。自分の弱さに気付いたとき、私に与えられた唯一の武器は、時間と忍耐、そして自分が行うサポートだけでした。それは父親としては大きな転機でした。

私は、この経験のつらさや難しさを減らせるという意味で言っているのではありません。それはつらくて困難です。しかし、私はこの病気が家族を崩壊させるかもしれないと思う一方で、再び一つに団結させる可能性も持っていると信じています。私はそれが父親次第だと考えています。戦士としての父親の仕事とは、自分の欲求や希望はさておいて自分自身と闘い、家族が生き残るためにはどんな犠牲をもいとわないことです。最後に振り返って見れば、あなたがこれまでにしてきたことが最高のことなのです。

ジョー (元小児がん患者の父親)

前のページへ戻る