延命処置の回避

苦痛を取り除くことを今後の治療の主目的にすると決めた後、親御さんとお子さんが決めなければならないことの1つは、お子さんの心臓や呼吸が止まった場合に蘇生術を行うかどうかです。(※訳注:米国では、以下に説明するような「DNR(蘇生不要)」「DNI(挿管不要)」「AND(尊厳死)」の要望書を使用します。)

  • 「DNR(蘇生不要)」は、患児の呼吸や心臓が止まった時に適用されます。「DNR」とは、人工呼吸や心臓マッサージ、心臓の薬の投与、人工呼吸器の装着などの心肺蘇生法が行われないことを意味します。
  • 「DNI(挿管不要)」を要望すると、人工呼吸や心臓マッサージ、心臓の薬の投与は行われますが、人工呼吸器は装着されません。
  • 「AND(尊厳死)」は、米国では、以前からあった「DNR(蘇生不要)」の代わりにいくつかの病院で使用されています。「DNR」では呼吸や心拍が止まった場合に蘇生術をしないで欲しいということを単に述べているだけですが、「AND」では、苦痛や他の症状をコントロールする処置だけが行われるように要望するために使用します。これは患児のQOL(※訳注:Quality of Lifeの略、生活の質の意味)を高めることなくただ死までのプロセスを引き延ばすだけの蘇生術、人工栄養、点滴などの処置をしないことや中止することを意味します。つまり、人間が自然に亡くなっていく過程を受け入れることを意味します。さらに、両親や患児自身がそれを望むのであれば、患児が亡くなるまでの時間をたくさんの家族や友人に囲まれながら穏やかで平和な気持ちで過ごせるように、あらゆる努力がなされます。

医療関係者との十分な議論は非常に重要で、米国では「DNR」「DNI」「AND」の要望書が効力を発する状況とその場合に取られる医療行為についてよく理解されています。そして、「DNR」「DNI」「AND」の決定はいつでも変更したり撤回したりすることができます。

さらに、米国で「DNR」「DNI」「AND」の要望が適用される場合には、両親がそれを希望していることを確認するために治療チームが定期的に(数日間ごと、または毎週)話し合いの機会をもちます。可能な場合には、患児本人も議論に参加するように勧めており、患児の希望通りに実行されます。これらの延命処置を回避すると決めた場合、良い治療を受けられなくなるのではないかと心配する親御さんもいます。しかし、米国の多くの研究では、「DNR」「DNI」「AND」の要望書に署名がなされ、緩和ケアが始まった後も、それまでと同程度か、むしろより多くの処置が実際には行われていることがわかっています。

患児が最後まであきらめずに治療を続けたいと思っている場合

あらゆる手段を尽くし、考え得る全ての薬剤や治療法を最後まで使用したいと思う患児や家族も中にはいます。治療方針を決める時、このような親子は治療法をその都度話し合っています。「あきらめない」あるいは「挑戦し続けたい」ということであれば、医学が提示できる全ての選択肢、機会および可能性について話し合うことが必要でしょう。また、追加治療に関するセカンド・オピニオンを求めるご家族もいます。米国では、一部の病気について、フェーズIの臨床試験(研究室や動物実験で見込みがありそうな結果を示した治療について確認するための臨床研究で、ヒトに対しては始まったばかりの研究)に参加できる医療機関もあります。お子さんとご家族が頼めば、治療を受けるためにそのような施設へ紹介してもらうことができます。どんな決定をするにしても、リスクと利益を全て調べ、お子さんに対して一番良い選択をする必要があります。最も積極的な治療を求める場合であっても、お子さんの利益を最優先にし、治療中にできる限り快適に過ごせるようにすることが一番大切なことです。

QOLと生命の終焉までの時間とのバランスを取ることは、あなたとお子さんが下す判断の中で常に最も難しいものの1つです。あなたとお子さん各々が残された時間に対してどのような価値観を持ち、どれだけの費用をかけるべきかを知ることが大切です。そして、互いに話し会うことによって最も良い決定を下すことができます。

結果論で批判することはありがちなことです。親御さんは自分達が「間違った」決断を下してしまったのではないかと不安になることが時にはあります。しかし、どのように決断したとしても、あなたの意思決定においてお子さんの要望を最重要事項としていれば、間違った決断を下すことはありません。どのような決定をしようとも、お子さんがあとどれだけあなたと一緒にいられようとも、その時点でわかっていることと信頼できる人からの忠告の全てを考慮に入れながら決めたことは、あなたのお子さんへの愛情を最も反映しているのです。

 

【関連ページ】

緩和ケア

前のページへ戻る