治療の不安への対処

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お子さんが受けるがん治療の中には、痛みを伴うものがあります。子どもは痛い治療に対して様々な反応をします。痛みを怖がるわが子を見るのは親としては耐え難いことです。親御さんはがんと闘うために必要な治療だと理解できても、お子さんには理解できないかもしれません。痛みが伴うことを良いことだとはなかなか思えないものです。しかし、心の準備ができるように手助けすることで、お子さんは治療を受け入れられるようになるかもしれません。

このページでは、これから受ける治療や、治療による痛みに関して、お子さんにどのように伝えるかについて説明します。そして、お子さんがうまく治療と向き合えるようにするためのヒントをご紹介します。ほとんどの場合、痛みを完全に取り除くことは期待できませんが、痛みをやわらげるためにできる基本的な手順がいくつかあります。お子さんの担当医、看護師、心理療法士、ソーシャルワーカー、利用可能な場合には疼痛管理の専門医に相談することも有効な方法です。これらの専門家は子どもたちの痛みに対処するための専門的な訓練を受けており、問題を解決するために親御さんやお子さんと一緒になって取り組んでくれます。子どもは痛みに様々な形で反応します。お子さんに有効な方法が見つかるまでには、いくつかの方法を試してみる必要があるかもしれません。お子さんが痛みを感じていることに気付き、それを和らげるのに役立つ方法を見極めることになった時には、お子さんのことについてはあなたが一番詳しいのだということを思い出してください。

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お子さんへの治療予定の説明

特にお子さんが幼い場合には、これから受ける治療について医師はお子さんがいない場所で親御さんに説明することでしょう。あなたは親として、聞いた話のどこまでをお子さんに伝えるか、いつそれを話すかを決めなければなりません。一般的には、事前に説明しておいた方が治療によってお子さんが受ける苦痛を減らすことができます。また、事前に説明することで、お子さんは質問をする機会を得ることができ、治療を受ける際の上手な対処方法を身につけて実践することもできます。

当然のことながら、お子さんにどの程度までをいつ知らせるのかは、お子さんの年齢、痛い治療を受けた経験、受けなければならない治療の種類、そして、いつ話をするのが良いかについての親御さんの判断によって変わってきます。通常、出血を伴う処置や痛い治療に備えるためには、子どもはより多くの時間を必要とします。通常は治療前の数日から1週間程度ですが、教えるタイミングはお子さんの年齢と発達段階により異なります(※参考資料1)。一般に年齢が高いお子さんには幼いお子さんよりも詳しい説明をする必要があります。

治療について伝える情報は具体的であるべきです。どのようなことが起こるのか(治療の手順)、それをどう感じると予想されるかをお子さんに伝えてください。お子さんにわかる簡潔な言葉を使い、これから何が起きようとしているかをお子さんに自分の言葉で言わせて、理解できているかどうか確かめてください。わからないことは質問するようにお子さんに言いましょう。親御さんが答えられない質問は、全て治療チームにきちんと答えてもらいましょう。お子さんは「それは痛い?」と聞くかもしれません。お子さんの恐怖心や不安を減らすために、親御さんは直観的に「痛くないよ」と答えたくなるかもしれませんが、真実を話すことが重要です。そうすることで、お子さんは親御さんを信頼します。これは、お子さんが痛い治療にもきちんと向き合えることを親御さんがわかっていると示す良い機会にもなります。お子さんには、「ひりひりする」「ずきずきする」「チクっとする」などの具体的な言葉(もしくはあなたとお子さんが痛みを伝えるために普段使っている言葉)で感じる痛みを教えてあげてください。しかし、痛いことはすぐに終わって、もっと楽しいことに戻れるということも教えてあげてください。

お子さんがどんな治療がどこで行われるのかを非常に気にする場合は、担当の治療チーム、特に心理療法士やチャイルドライフ・スペシャリスト(※訳注:病院生活における子どもの精神的負担をできるかぎり軽減し、成長・発達を支援するための専門職)などに相談すれば、治療が行われる部屋を事前に見学したり治療機器で予行演習したりできるかもしれません。 たとえば、手術前に麻酔用マスクを装着する練習をした子どもは、実際の手術の際にマスクの装着を不安がらなかったという報告があります(※参考資料2)。一部の病院に設置されている疼痛管理の専門チームなら、長期間続く痛みや複雑な痛みに苦しむ子どもたちの痛みを緩和する手助けをしてくれます。

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痛み

痛みは主観的なものです。つまり人によって感じ方が異なるため、その人が痛みを感じているかどうかを知るための唯一の方法は、その人の話を聞いて、様子を観察することなのです。あなたはお子さんのことを一番よく知っているので、医師がお子さんの痛みを理解するためにはあなたの協力が必要です。

痛みには3つの要素があります。

  • 身体
  • 気持ち
  • 考え

神経質になったり、怖がったり、心配したりすると、痛みはひどくなります。痛みのことばかり考えて気にしすぎることによっても悪化します。幼いお子さんを注射のために医師の元へ連れていかなければならなかった時のことを考えてみてください。おそらくお子さんは注射を打たれる前に既に泣き叫んでいたことでしょう。注射が終わった後も、まるでそれが世界中で一番ひどい出来事だと言わんばかりに大騒ぎをしたはずです。今度は、そのお子さんをお風呂に入れていて、遊んでいる時に落ちてできたこぶやあざに気付いた時のことを思い出してみてください。お子さんはそのこぶやあざの痛みに、注射の時と同じように反応しましたか?おそらくどのようにケガをしたかさえ思い出さないことでしょう。怖がって痛みを気にしすぎると、このように感じ方に大きな違いができるものなのです。

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痛みへの対処方法(自分たちでできること)

身体:

痛みの種類に応じて様々な薬が存在するので、お子さんが感じている痛みを止めたり和らげたりすることができます。医学的な処置や薬剤の使用を検討するにあたっては、「検査および処置」の項目で、特別な検査についての情報を確認してください。

気持ち:

治療の前や、何か大きな出来事の前に、怖がったり神経質になったりするのは普通のことです。プロのスポーツ選手を例に挙げてみましょう。たとえその競技が得意であっても試合では神経質になるので、彼らは良い結果を出せるように自分の気持ちをコントロールしなければなりません。 あなたは今までに大きい試合を直前に控えたプロのスポーツ選手を見たことがありますか?その時に彼らがどんなことをするのを見ましたか?おそらく試合が始まる前に一部の選手がヘッドホンをして待機しているのを目にされたことでしょう。音楽を聴くことが選手にどのような効果をもたらしていると思いますか?集中力が増すのでしょうか?おそらくそうではありません。もしそうならば、彼らは音楽を聴いたりしないでしょう。音楽を聴くのは、よりリラックスするためなのです。今度バスケットボールの試合を見る時には、フリースローを行う直前の選手が何をするかを見てください。大部分の選手はシュートをする直前に深呼吸をします。深呼吸は身体と気持ちを落ち着かせるための方法の一つなのです。

お子さんが落ち着いてくつろいだ気持ちになれるようにするためには、音楽を聴かせることや本の読み聞かせなど、普段からお子さんをくつろがせたりなだめたりするためにしていることを考えてみてください。治療の準備ができるまでお子さんの気持ちを落ち着かせておくのにはこうしたことが役立ちます。お子さんが治療と向き合うのを手助けするために最も大切なことは、あなた自身が落ち着いていることです。幼児も思春期の若者も表情を読み取るのが得意です。針を見て顔をしかめたり、治療が始まる時に恐怖心で顔を背けたりすることは、痛いことが始まるという合図になってしまいます。わが子が痛がっている姿を見るのはとても辛いことなので、針や目の前の出来事から目をそらすのは仕方ありませんが、重要なのは、自分で乗り越えられることなのだとお子さんに伝えることです。あなたが冷静で落ち着いていれば、お子さんが自分でどうにかできるだろうと信じていることを示せます。この状況においては、あなたが一人ではないことを忘れないでください。担当医、看護師、心理療法士、ソーシャルワーカー、疼痛管理の専門医などにお子さんの痛みを抑える方法について相談しましょう。

お子さんのために治療前や治療中に役立つ方法がいくつかあります。

  • 深呼吸をしましょう。
    人は神経質になったりパニックを起こしたりした時、呼吸が早くなり心拍数が上がります。落ち着いているためには、その反対のこと、つまり深呼吸をしましょう。ゆっくり静かに呼吸していれば、神経質になったりおびえたりしないものです。お子さんは呼吸のことを考えるので、治療から意識をそらすことにもなります。
  • 手をじっと握ってリラックスしましょう。
    お子さんには自分の手をじっと握ってリラックスしているという仕事を与えてください。お子さんの手は膝の上、椅子の肘掛けの上、ベッドの上など、どこでも好きな所に置いて構いません。お子さんの手がひどく震える場合には、あなたの手をお子さんの手に重ねて落ち着くのを助けてあげましょう。お子さんが落ち着いたら、手を離しても良いし、そのまま置いていても構いません。お子さんに決めさせてあげることもできます。あなたの手が落ち着いてリラックスしていれば、お子さんが怖がることはありません。手をリラックスさせるために通常はゆっくりと呼吸しなければならないことにも気づくことでしょう。この動作の良い所は、お子さんがいつ、どこでも、人目を気にせずに実行できることです。学校での試験や発表、スポーツの大会など、自分が神経質になっていると感じる時に使える素晴らしい方法です。

考え:

治療が始まる前にどのくらい痛いだろうかとか我慢するのがどんなに辛いだろうかなどと考えると、お子さんはさらに神経質になり、その結果、余計痛くなってしまいます。治療中に痛みのことばかり気にし、何が起きているかを見て、そのことについていろいろと考えることでも、痛みは増してしまいます。お子さんの意識や注意を痛みに向けないようにするための方法がいくつかあります。

  • 他のことを考えましょう。
    お子さんが治療について心配している場合は、他の話をしたり、本や雑誌を読んであげたり、物語を聞かせてあげたり、歌をうたってあげたりしてください。お子さんの意識を治療からそらすために、おもしろいことならばどんなことでもかまいません。
  • 気晴らしをしましょう。
    お子さんがおもちゃ、ビデオ、しゃぼん玉などのもっと楽しいことに集中すれば、痛みや治療から注意を反らすことができます(※参考文献3)。気を紛らわせるのに最適な方法は、単純かつ魅力的なもので、十分に引き込まれているのか、もっと働きかけが必要なのかがお子さんの反応でわかるようなことです。また、その方法は治療の妨げになってはいけません(したがって、治療中にじっとさせておくためには、たくさん動かなければならないようなことは不適切です)。適切な例としては、普通のおもちゃ、音の出るおもちゃ、「吹き戻し」、かざぐるま、携帯型ゲーム機、ビデオ(DVD)、歌、物語、絵本、数をかぞえることなどです。 お子さんが本当に好きな物なら何でも使えます。幼いお子さんには新しいおもちゃを渡すと効果的です。年齢が高いお子さんには、好きな音楽、雑誌、ビデオなどを自分で選ばせてあげましょう。お気に入りの携帯型ゲーム機やスマートフォンのアプリなども非常に効果的です。
  • 好きな場所へ行きましょう。
    お子さんの想像力を働かせて、お気に入りの場所にいるつもりになるように導きましょう。こうすることで、お子さんはどこでも好きな場所にいられるのです。お子さんに、リラックスしてゆっくりと深呼吸しながら、目を閉じるように伝えましょう。そして、自分のお気に入りの場所で、何かを見たり、聞いたり、手で触ったり、感じたりしているところを想像させるのです。通常、より年長のお子さんは想像力を働かせて自分の好きな場所に行くのがかなり得意です。お子さんのお気に入りの場所がどこなのかがわかり、あなたの好きな場所と比べることができて、きっと楽しいことでしょう。大人に比べると、子どもはリラックスするためにより活動的な場面(例えば、遊園地など)を想像します。想像の世界で好きな場所に行くことをしなくても、好きな場所についてただ話をするだけでも気は紛れるものです。

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治療終了後にすること

  • お子さんを慰めてあげましょう。
    治療が終わったら、すぐにお子さんを抱きしめたりやさしく撫ぜたり静かに話しかけたりして慰めてあげることで回復の助けになります。治療に関係がないことでも構いませんので、以前にお子さんを落ち着かせるのに役立ったことを考えて、それを実践してください。治療が終わるたびごとの習慣として、楽しめてリラックスできるような何かを家族一緒に行うことがとても役立ったというご家族もいます。素敵な音楽を聴く、大好きなショーや映画を見る、面白い雑誌を読むなど、お子さんがつらい治療を乗り越えるために楽しみにできることなら何でも構いません。
  • お子さんがいかにがんばったかを伝え、たくさん誉めてあげましょう。
    多くの子どもは、治療を乗り切るという成功体験から自尊心を得て、気分が良くなります。お子さんは、自分が素晴らしいことを成し遂げたと感じて当然です。そして、あなたは次の治療の時に「この間はあんなすごいことができたのだから、今度も大丈夫だよ」とお子さんに思い出させることもできます。また、治療がどれくらい痛かったかをお子さんに尋ねてみてください。お子さんが予想していたよりも痛くなかったのならば、次の治療の時にそのことを思い出させてあげましょう。
  • ごほうびをあげましょう。
    中には難しい治療を受けなければならないお子さんもいます。そのような場合には、明確な見通しを持って、どっしりと構えているようにしましょう。お子さんにも理解できるはっきりした目標と、お子さんがその治療を乗り切った時の小さなご褒美を考えておいてください。そして、治療中はお子さんを助け、治療がうまくいったら、お子さんの努力に対してごほうびをあげてください。

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避けるべきこと

多くの親御さんの最初の反応は、「痛いのね、良くわかるよ」とか、「あなたがこんなことになってしまってごめんね」とお子さんに感情移入することですが、実際のところ、過剰な励ましや謝罪は慰めになるよりも落ち込みを増すことにつながります(※参考資料4)。このような言葉は、治療に積極的に向き合おうという気持ちを起こさせるよりも、むしろ子どもの注意を恐怖や痛みに向けさせることになります。ある程度の励ましは構いませんが、痛みばかりを気にするのではなく、どのように対処すべきかを教えてあげるほうがお子さんの苦悩を減らすのに役立ちます。

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これらの方法でうまくいかない場合

これまでに述べた方法ではお子さんが痛みに対処できない場合は、担当医、看護師、心理療法士やチャイルドライフ・スペシャリストなどの治療チームのその他のスタッフに相談してください。また、お子さんの病院には疼痛管理の専門医がいるかもしれません。これらの専門スタッフは、あなたやお子さんと一緒になって、お子さんの痛みや苦しみを改善するためのさらなる方法を講じてくれます。彼らがお子さんに新しい対処方法を教えてくれる場合には、あなたにも教えてくれるように頼みましょう。そうすれば、その方法をまた使う時にはお子さんを手伝うことができます。

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【参考文献】

  1. Jaaniste T, Hayes B, Von Baeyer CL. Providing children with information about forthcoming medical procedures: A review and synthesis. Clinical Psychology: Science and Practice. 2007;14(2):124-143.
  2. Kain ZN, Caldwell-Andrews AA, Mayes LC, et al. Family-centered preparation for surgery improves perioperative outcomes in children: a randomized controlled trial. Anesthesiology. 2007;106(1):65.
  3. Blount RL, Piira T, Cohen L. Management of pediatric pain and distress due to medical procedures. Handbook of pediatric psychology. 2003;3:216-233.
  4. Blount RL, Zempsky WT, Jaaniste T, et al. Management of pediatric pain and distress due to  medical procedures. In: Roberts MC, Steele RG, eds. Handbook of Pediatric Psychology. 4th Ed. ed. New York: Guilford Press; 2009:171-188.
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