患児にとって栄養が重要な理由

栄養と治療

すべての子どもにとって適切な栄養は大切ですが、がん治療を受けているお子さんには特に重要です。その理由は、お子さんの食欲、特定の食品に対する耐性、食品中の栄養素を吸収する力が、病気そのものによっても治療によっても様々な影響を受けるからです。

がんとがん治療がお子さんの栄養状態に与える影響は一人一人異なります。栄養士はお子さんに合った具体的な栄養面の目標を立てる手助けをし、特別なニーズに合う食事の摂り方を提案することができます。

適切な食事によって、がんのお子さんも体力を落とすことなく治療や副作用に耐え、成長し続けることができます。適切な食事とは、成長に必要な栄養素だけでなく病気との闘いに必要な栄養素をも様々な食品から摂取することをいいます。必須栄養素とはタンパク質、炭水化物、脂肪、水分、ビタミン、ミネラルなどです。

栄養の基本

経口摂取、経管栄養、完全静脈栄養などお子さんに必要な栄養摂取法とともに、それぞれの栄養素について理解することが重要です。

栄養素

タンパク質

タンパク質は、成長、生体組織の修復、免疫機能の維持に必要な必須栄養素です。タンパク質摂取量が少ないと病気からの回復が遅れ、感染に対する抵抗力が低下します。病気になるとタンパク質必要量が増加することがよくあります。小児がん治療中のお子さんは通常より50%多い量、すなわちがん治療を受けていない同年齢の子どもの1.5倍のタンパク質を必要とすることがあります。これは通常、手術、化学療法、放射線治療の後の組織の治癒および感染予防のためにタンパク質が必要となるためです。

炭水化物および脂肪

炭水化物と脂肪は体の主要なエネルギー(カロリー)源です。各自に必要なカロリー量は、主に年齢・体の大きさ・活動量により異なります。また、乳児・小児・青少年にとって適切なカロリーを与えることが特に重要であるのは、適切な成長と発育を促進するためです。がん治療を受けている場合、健常な組織の治癒および体力を維持するために追加のカロリーが必要になることがよくあります。がんの治療を受けているお子さんは通常より20%多いカロリー、すなわち平均的な小児の1.2倍のカロリーが必要になります。

ビタミンおよびミネラル

ビタミンとミネラルは体内で重要な多くの働きを担っています。すなわち、成長と発育、および食べ物をエネルギーに変えるために欠かせない栄養素なのです。バランスのよい食事をし、十分なカロリーとタンパク質を摂取していれば、通常は十分なビタミンとミネラルを得ることができます。しかし、がん治療を受けているお子さんは食欲の低下が長く続き、十分なビタミンとミネラルを摂るのが難しい場合があります。適切な栄養を与える取り組みが不十分な場合、お子さんに必要なこれらの栄養素を100%満たすためのマルチビタミンとミネラルのサプリメントを主治医が処方する場合があります。

水分

水分は小児の体に非常に重要です。水分摂取量が少ない、あるいは嘔吐や下痢がみられると、脱水状態になる可能性があります。脱水状態になると気力が低下したりめまいを感じたりすることがあります。脱水状態となることを防ぐには1日にどれくらいの水分が必要かを医師、看護師、栄養士に尋ねましょう。

Nancy Sacks [MS, RD] The Children’s Hospital of Philadelphia

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