眼の問題

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小児がんの治療においては、眼に悪影響を与えるおそれのある投薬治療や放射線治療を必要とすることがあります。視力は日常生活に大きな影響を及ぼすので、そのような治療を受けた小児がん経験者は、眼の検査を定期的に受けることが重要です。

 

眼の働き

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眼は素晴らしい器官です。眼が光を神経信号に変えて脳に伝えるので、脳が眼で見た像を受け取ることができるのです。眼は頭蓋骨の眼窩(がんか)と呼ばれるところに位置しています。結膜という薄い組織が眼とまぶたの内側を覆い保護しています。涙は、眼窩の外側の端にある外眼角の上側にある涙腺で作られます。涙は眼を覆うように流れて眼に潤いを与え、内眼角(目頭)にある涙管と呼ばれるところに流れ込んで排出されます。

光は薄い透明な組織層である角膜を通って眼の中に入ります。角膜は弯曲しており、光を屈折させ、瞳孔と呼ばれる穴を通って眼球の中に送り込みます。瞳孔は眼に入る光の量を調節します。瞳孔の奥には眼の水晶体があり、眼の最も奥の内壁にある網膜の上に光のピントを合わせます。網膜にある神経細胞が光を電気信号に変え、視神経を通じで脳に送り、それにより脳は眼で見た像を受け取ることができます。

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小児がんの治療後に起こり得る眼の問題

  • 白内障: 眼のレンズのくもり。この症状が起きると光は眼の中を進みにくくなります。白内障によく起こる症状には、痛みを伴わないかすみ、光やまぶしさに敏感になる、片側の眼に起こる複視、夜ものが見えにくい(夜盲、いわゆる鳥目)、色が薄れて見えたり黄色に見えたりする、頻繁に眼鏡やコンタクトレンズの度を変えなくてはいけない、などがあります。
  • 乾燥性角結膜炎: 乾燥により生じる角膜(眼球の外側にある透明な組織)と結膜(眼とまぶたの内側の膜)の炎症。この症状は、放射線治療や移植片対宿主病(GVHD)のために涙腺で作られる涙の量が減少することによって起こります。症状は、眼の表面の痛みや光に対して敏感になることなどです。
  • その他の眼の問題: 以下に述べる眼の問題は一般的ではありませんが、通常、眼と眼窩に直接放射線治療を受けた場合にのみ見られるものです。
  • 眼窩の発育不全: 眼と眼の周りの組織の発達が不全になることで、眼球もしくは眼の周りの組織への放射線治療により生じます。これにより、眼が小さくなったり、眼窩が小さく(眼窩の発育不全)なったりすることがあります。
  • 涙道の委縮: 涙を排出している涙道が狭くなること。涙道の委縮により涙があふれることが多くなるという問題が生じることがあります。
  • 眼球乾燥症: 眼や眼窩への放射線治療に伴って涙腺が傷つき、ドライアイを引き起こすことがあります。
  • 角膜炎: 角膜(眼球の外側にある透明な組織)の炎症。この症状は眼の外側の痛みや光への敏感さの原因となります。
  • 毛細血管拡張症:眼球の白目の部分にある血管が拡張すること。このことによる症状は通常は特にありませんが、拡張した血管が現れることによってうっとうしく感じることがあります。
  • 網膜症: 網膜の損傷(網膜は眼の内側の奥にあり、眼で見た情報を脳に伝える役目を果たしています)。痛みを伴わずに視力を失うことが網膜症の主な症状です。
  • 視交叉性神経障害: 眼からの視覚情報を脳に送る神経の損傷。視力を失うこともあります。
  • 眼球陥入: 眼球が眼窩の中に落ち込んでしまった状態。

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眼の問題のリスク要因

以下の治療は、白内障のリスクは増しますが、通常、その他の症状を引き起こすことはありません。

  • ブスルファンの投与
  • プレドニゾンやデキサメサゾンのような副腎皮質ステロイドの投与

下記の部位に対する放射線治療は、治療を必要とするような眼の問題を引き起こします。

  • 眼窩
  • 脳(頭蓋)あるいは、脳と脊髄(頭蓋脊髄軸)
  • 全身照射(TBI)
    (※訳注:「TBI」とは「Total Body Irradiation」の略で、全身のがん細胞を消失させるとともに、骨髄移植に先立って、拒絶反応を防ぐ目的で宿主の骨髄幹細胞を根絶やしにして免疫力を低下させるために化学療法と併用して行われる全身照射のことです。)
  • 放射線の照射量が30グレイより少ない場合、白内障発症のリスクは増しますが、通常、それ以外の晩期合併症が起こるリスクは増えません。

以下の要因がある場合は、放射線治療によって白内障発症のリスクが増します。

  • 放射線の1回あたりの照射量が2グレイ以上の場合
  • 放射線の総照射量が10グレイ以上の場合
  • 全身照射(TBI)を一度で行う場合
  • 治療後の時間経過(治療終了後の生存期間が長い場合)

その他、眼に影響を及ぼすような長期にわたる晩期合併症は、通常、眼もしくは眼窩への30グレイ以上の放射線治療により発症します。

眼の問題を引き起こすその他のリスク要因には次のようなものがあります。

  • 慢性移植片対宿主病(GVHD): 同種(自家移植でなくドナーからの移植)の骨髄移植もしくは幹細胞移植により生じるもので、乾燥性角結膜炎のリスクを高める要因となります
  • 糖尿病: 網膜症と視交叉性神経障害のリスクが増します
  • 高血圧: 視交叉性神経障害のリスクが増します
  • 太陽の光に頻繁にさらされること: 白内障のリスクが増します

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推奨される経過観察

下記の表は継続的に経過観察を受ける際に推奨される内容です。

治療内容 投与量・
線量
必要な経過観察 頻度
プレドニゾンやデキサメサゾンのような副腎皮質ステロイドの投与 投与量を問わず 定期健康診断の際に眼の検査を組み込んで実施すること
・視力検査
・白内障の検査(眼底検査)
年1回
(もし何らかの問題が分かった場合には、必ず眼科医による診察を受けなければなりません)
全身照射(TBI) 線量を問わず 眼科医による検診 年1回
脳、眼、眼窩への放射線治療 30グレイ以上 眼科医による検診 年1回
30グレイ未満 眼科医による検診 3年に1回
加えて、定期健康診断の際に視力検査と白内障の検査を組み込んで行うこと
注意事項:「眼科医による検診」には、視力検査、白内障の検査、および眼球内部の精密検査が含まれていなければなりません。視力に問題が生じた場合には眼科医の定期的な再検査を受けなければなりません。

下記の症状が出た場合には、直ちに医師の診察を受けてください。場合によっては、専門の眼科医を紹介してもらうことが必要かもしれません。

  • 眼のかすみ
  • 複視
  • 視野が欠ける
  • 光に敏感になる(まぶしい)
  • 夜、物が良く見えない
  • 眼の表面、あるいはまぶたが絶えず痛い(ちくちくする)
  • 眼球の中の痛み
  • ドライアイ

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治療方法

  • 白内障:全ての白内障に治療が必要なわけではありません。多くの場合、眼科医は何年にもわたって注意深く経過観察を行い、症状が悪化した場合に治療を勧めます。白内障の唯一の治療法は、白く濁った水晶体を手術で取り除き、代わりに人工水晶体を入れることです。今日では、白内障の手術はリスクが低いものとなっており、入院することなく治療ができて、視力を回復するのに有効な手段となっています。
  • 眼窩の発育不全:眼窩の発育不全は、通常、治療の必要はありません。症状が重い場合は、眼の周りの骨を再形成することが可能です。
  • 涙道の委縮:涙が激しくあふれることで大きな問題が生じている場合には、涙道を拡げて涙がうまく排出されるようにします。
  • 眼球乾燥症:ドライアイの治療には、点眼液を頻繁に注すか、眼の表面に潤いを与える軟膏を用います。症状が重い時には、眼から排出される涙の量が減るようにブロックする手術が可能です。
  • 角膜炎と乾燥性角結膜炎:点眼液を頻繁に注すか、眼の表面に潤いを与える軟膏を用いることが推奨されます。睡眠中に目を眼帯で覆うことも治癒の効果を高めます。感染による角膜炎については、抗生物質を含んだ点眼薬か軟膏で治療します。まれに、手術による角膜の交換(移植)が必要です。
  • 毛細血管拡張症:特に治療の必要はありません。
  • 網膜症:レーザーもしくは光凝固術(熱凝固)による網膜の治療が必要になることがあります。まれに、症状が重い場合には手術による眼球の摘出が必要です。
  • 視交叉性神経障害:現時点で可能な治療法はありません。
  • 眼球陥入:眼窩を形成するための手術を行うことが可能です。

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視力に問題が残ってしまった場合

視力に問題があることが判明した場合には、眼科医の治療の勧めに従うことが重要です。視力の回復が難しい場合には、多くの地方自治体が行政サービスを提供しています。

【参考情報】

米国では、地元の公立学校の学区か代理の事務所を通じて、22歳未満の人が行政サービスを利用できます。(個別障害者教育法、公法105-17に基づいて利用可能)。教室の一番前の席にして欲しいという要望だけの場合もありますが、通常こうしたケースでは、親が子供のために学区を通じて個別教育計画(IEP:Individualized Education Plan)の作成を請求する必要があります(「小児がん治療後の教育の問題 」を参照してください)。米国障害者法(ADA、公法101-336)は、公共の場所、イベントおよび機会に対して平等の権利を保証しています。

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自分の眼を護るためには

過去に受けた治療に関連する眼の問題があるか無いかに関わらず、自分で自分の眼を護ることは重要です。自分でできる注意事項は以下の通りです。

  • 日中の太陽光の下では紫外線防止のサングラスを着用しましょう。
  • スポーツをする時には、スポーツに適した眼の防護具(スポーツ用のゴーグル・眼鏡等)を付けましょう。その防護具が眼の保護に適した専門用具かどうかを確認してください。
  • 先のとがった部品や出っ張ったところ、飛び出すパーツがあるようなおもちゃは避けましょう。
  • 偶然のケガを防ぐために、花火や爆竹などで決して遊ばないようにしましょう。
  • 危険のある家庭用化学薬品は注意して扱いましょう。
  • 芝刈り機や電動剪定機、刃物研ぎ器を使う時や、その他の危険を伴う電動工具を使う際には、眼の防護具を着用しましょう。
  • 万一眼を傷つけてしまった場合は、すぐに医師の診察を受けましょう。

Teresa Sweeney [RN, MSN, CPNP]

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