肝炎

INDEX

小児がんの治療では、輸血や血液製剤の投与が必要になることがしばしばあります。残念なことですが、命を救うための血液製剤のいくつかには、肝臓に感染するウイルスも含まれていました。肝臓のウイルス感染による炎症は「肝炎」と呼ばれています。ウイルス性肝炎には主に2つのタイプ(B型肝炎とC型肝炎)があり、どちらも血液製剤を通じて感染する可能性があります。

献血者に対するB型肝炎およびC型肝炎のスクリーニング検査が行われる以前に血液製剤の投与を受けた小児がん経験者は、これらのウイルスに感染した可能性があります。
(※訳注:日本におけるB型肝炎ウイルスのスクリーニング検査は、1989年12月から、従来のHBs抗原検査に加えて、HBc抗体検査が導入されたことにより、輸血後のB型肝炎、特にB型劇症肝炎はごく例外的にみられる場合を除いて、ほとんどみられなくなりました。C型肝炎ウイルスに関しては、1992年以前に輸血や臓器移植手術を受けた方は、C型肝炎ウイルスに汚染された血液か否かを高感度で検査する方法がなかったことから、感染している可能性が一般の方より高いと考えられます。また、1994年以前にフィブリノゲン製剤の投与を受けた方(フィブリン糊としての使用を含む)、または、1988年以前に血液凝固第VIII、第IX因子製剤の投与を受けた方は、これらの製剤の原料である血液のウイルス検査、C型肝炎ウイルスの除去、不活化が十分になされていないものがあるので、同じくC型肝炎ウイルスに感染している可能性が一般の方より高いと考えられます。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス共に、1999年10月からPCRを用いた核酸増幅検査(NAT)によるHCV-RNAの検出が全面的に導入されたため、現在は安全性が一段と向上しています。詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧いただくか、主治医に相談してください。)

それ以外の血液との接触(注射針の使い回し、刺青(入れ墨)、ボディーピアス、血液透析、臓器移植など)によってもB型肝炎やC型肝炎が拡がる可能性があります。また、肝炎ウイルスは、感染者との性行為や、出産で感染者の母親から新生児にうつることもあります。こうした感染は、一般的にC型肝炎よりもB型肝炎の方がはるかに高頻度です。

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肝臓とは

肝臓は体の右側の胸郭の下におさまっている三角形の臓器です。平均的な大人の場合、肝臓はアメリカンフットボールと同じくらいの大きさで、大体1.5kg前後の重さがあります。肝臓は、血液中から毒素を取り除き、消化と新陳代謝を助け、血液凝固タンパクなどの重要な物質の製造を行っています。

肝臓に問題が起きた場合の徴候と症状はどのようなものでしょうか?

最初に肝炎ウイルスに感染した時(急性期)、B型もC型も症状がほとんどありません。しかし、一部の人には倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、微熱などの風邪に似た症状があります。黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)、濃い色の尿、激しいかゆみ、あるいは薄い色(粘土のような色)の便のように、肝臓に直接関係のある症状を経験する人もいます。また、極めて稀ですが、症状が非常に重くなり(劇症肝炎)、肝不全を引き起こす場合もあります。

肝炎は、完治すれば、それ以後は何の健康問題も生じません。ただ、残念なことですが、幼年期にB型肝炎やC型肝炎に感染した人の多くは「慢性的な」感染となります。慢性肝炎は自覚症状が何もなく、元気に感じるかもしれませんが、肝臓の瘢痕化(肝硬変)や、他の合併症を併発するリスクがあります。稀に、肝臓癌を発症することもあります。また、慢性肝炎の人にはウイルス感染を他の人へとうつしてしまうリスクもあります。

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肝炎に感染した人によく見られる徴候や症状

ほとんどの慢性肝炎の人には徴候も症状も見られませんが、長期間に及ぶ感染は肝臓の損傷を進行させる原因となります。肝臓が損傷を受けた際の徴候は、肝臓と脾臓の腫大、腹部膨満感または腹水の貯留、白目と皮膚が黄色くなること(黄疸)、血液凝固因子の低下などです。

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肝炎の検査方法

肝炎ウイルスの有無は血液検査でわかります。

  • 慢性B型肝炎に感染している人は、B型肝炎表面抗原(HBs抗原)が陽性になり、B型肝炎コア抗原(HBc抗体)も陽性となります。
  • 慢性C型肝炎に感染している人は、通常、C型肝炎抗体(HCV抗体)が陽性となります。C型肝炎抗体が陽性の場合、あるいは免疫不全状態(治療による免疫抑制状態)の場合には、血液中のC型肝炎ウイルスの程度を調べるために、C型肝炎ウイルスのRNA量を測定する検査(HCV-RNA)を受けることができます。)

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B型肝炎やC型肝炎のリスクがある人

ある時期よりも前に輸血を受けたか以下のような血清製剤を投与された人は、B型肝炎とC型肝炎の感染リスクがあります。

  • 濃厚赤血球
  • 全血
  • 白血球(顆粒球)
  • 血小板
  • 新鮮凍結血漿
  • クリオ製剤(※訳注:かつて血液凝固第VIII因子欠乏症である血友病Aの患者さんに対して止血のために用いられていた製剤で、全血輸血から第VIII因子濃縮製剤に至る間の過渡期に使用されました。)
  • 免疫グロブリン製剤
  • 同種移植のドナー(自分自身以外の誰か)から受けた骨髄あるいは幹細胞

その他のリスク要因は、一般的には以下の通りです。

  • 血液凝固因子濃縮製剤(第VIII因子あるいは第IX因子の濃縮製剤)の使用
  • 臓器移植(腎臓、肝臓、心臓などの移植)
  • 長期間に及ぶ(少なくとも数か月以上続く)腎臓透析
  • 薬の注射あるいは吸入
  • ボディーピアスや刺青(入れ墨)
  • 肝炎の人と髭剃り用のシェイバー、爪切り、歯ブラシなどを共有すること
  • 職業上、血液や体液に接する機会がある人
  • 複数の相手との性行為、感染を防ぐ手立て(コンドームの使用など)を講じない性行為など

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リスクに備えるために

B型肝炎やC型肝炎のリスクがある人は、感染の有無を調べるために血液検査を受ける必要があります。血液検査の結果が慢性肝炎の感染を示している場合には、以下のことを行う必要があります。

  • 肝臓の状態を確認するために、少なくとも年1回の血液検査(ALT値、AST値、ビリルビン値、AFP値、プロトロンビン時間の測定)を受けましょう。(※訳注:AFPとは、α(アルファ)フェトプロテインの略で、健康な成人の体内ではほとんど産生されないタンパク質ですが、肝細胞癌の場合に産生され、血液で検出されるため、腫瘍マーカーとして利用されています。ALT、AST、ビリルビン値、プロトロンビン時間については、「肝臓の健康 」を参照してください。)
  • 肝臓の専門医による継続的な診察(多くの場合は治療も)を受けましょう。

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肝臓の健康を保つためにできること

  • A型肝炎とB型肝炎に対する免疫がない場合には、肝臓を護るためにこれらの肝炎に対する免疫をつけておきましょう。(現時点では、C型肝炎を防ぐためのワクチンはまだありません。)A型肝炎とB型肝炎に対する免疫があるかどうかは血液検査(A型肝炎免疫グロブリン抗体とB型肝炎表面抗体の検査)でわかります。
  • アルコールを飲むのであれば、適度にたしなむ程度にしましょう。
  • 水をたくさん飲みましょう。
  • バランスのとれた線維質の多い食事を取るようにし、脂肪分、塩分、燻製、保存食は控えましょう。
  • 決められた量以上に薬を飲まないようにしましょう。
  • 不必要な薬を飲まないようにしましょう。
  • 薬とアルコールとを同時に飲まないようにしましょう。
  • 非合法に入手した、承認されていない薬を飲まないようにしましょう。
  • ハーブや天然サプリメントを摂る場合、特に薬との組み合わせに注意しましょう。
  • 性行為の際は、肝炎ウイルスの感染を防ぐ手立て(コンドームの装着など)を講じましょう。
  • 肝臓に有害な化学薬品(溶剤、エアゾールクリーナー、殺虫剤、塗料のうすめ液、その他の毒性がある物質)を避けるようにしましょう。これらの物質を使わなければならない場合には、換気の良い場所で、マスクと手袋を着けて作業してください。

慢性肝炎に感染している場合には、次の点にも気をつけなくてはなりません。

  • 詳しい診断と治療のために肝臓の専門医の診察を受けましょう。
  • 飲んでいる市販薬やサプリメント全てについて主治医に知らせましょう。
  • アルコールを控えましょう。
  • アセトアミノフェンが含まれている鎮痛剤や解熱剤(「タイレノール」などの非アスピリン系の薬)は服用を避けましょう。
  • 妊娠中の女性は、産科医や小児科医も含めた担当医と肝炎の状態について話し合っておきましょう。

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感染の拡大を防ぐ方法

B型肝炎やC型肝炎は、抱き合ったり握手したりするような日常的な接触では感染しません。しかしながら、B型肝炎やC型肝炎に感染している場合には、他人に肝炎をうつさないために以下の点を心掛けておく必要があります。

  • 自分の血液や体液を他人に直接触れさせないようにしましょう。
  • 飛散した血液や体液は漂白剤でふき取りましょう。
  • 切り傷やその他の傷口は覆うようにしましょう。
  • 髭剃り用のカミソリ、歯ブラシ、爪切り、ピアス、ボディーピアス、血液に接触する可能性があるその他の鋭利な物を他の人と共用しないようにしましょう。
  • ピアスの装着、注射、鍼治療においては新しい殺菌された針が使われることを確認しましょう。絶対に針の使い回しをしないでください。
  • 家族や交際相手がB型肝炎の免疫を持っているかどうかを確認しましょう。免疫がない場合には、B型肝炎ワクチンの接種が必要です。
  • 性行為の際は、肝炎ウイルスの感染を防ぐ手立て(コンドームの装着など)を講じましょう。

Wendy Landier [RN, MSN, CPNP, CPON] City of Hope

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