臨床試験とは

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臨床試験はある病気に対する最も有効で安全な治療法を確立するために行われます。各臨床試験は、生存率の改善、副作用や晩期合併症の軽減などを目指しています。臨床試験というと、参加する患者は薬剤を投与される場合と投与されない場合、すなわち偽薬の投与を指示される場合があると考えがちです。しかし、米国小児がん研究グループ(Children’s Oncology Group、略称:COG)のほぼ全ての臨床試験では、患児は薬物治療を受けており、患児が偽薬を投与されることはありません。

小児、10代の少年少女、若年成人のがん治療においては臨床試験が標準的な治療法であると理解することも重要です。成人のがん患者で臨床試験に登録しているのは5%未満ですが、29歳未満の患者だと60%が臨床試験に登録しています。臨床試験への参加は平均2~3年間に及び、生涯にわたってフォローアップのための受診が必要になります。

米国小児がん研究グループ(COG)の臨床試験計画

多くの人々や組織が臨床試験の実施に関わっています。米国では、小児がん研究グループ(COG)が210を超える参加病院と共に世界最大の小児科領域の臨床試験グループを構成しています。それぞれの新しい臨床試験については、医師、看護師、その他の専門家がどのように治療を行うかという計画を立てます。COG内の多くの専門家が臨床試験の内容を確認した後、米国立がん研究所(NCI)で承認を得ます。臨床試験に登録された患者の権利がきちんと保護されるかどうかを確かめる役割で、臨床試験参加病院内の倫理委員会(IRB)の承認も得なければなりません。治療施設で実際に臨床試験が始まる前に、COG内外の異なる専門家によって何度も確認されているということを理解しておきましょう。

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臨床試験の種類

臨床試験には、治療関連のものとその他の目的のものの2種類があります。

  • 治療関連の臨床試験では、患児を登録し、がんに与える影響の度合いを調べるために特別な治療を行います。
  • その他の臨床試験では、患者に対する治療を行わず、その代り、がんとその影響を解明する助けとなるような重要な因子について研究します。例えば、いくつかの研究では、腫瘍の細胞構造を調べるために組織標本を集めます。化学療法による長期的な健康への影響のような疫学的情報を追跡する研究もあります。こうした研究は、しばしば治療の研究につながります。

治療関連の臨床試験は、新しい治療法を評価するために3つの過程で行われます。それぞれの過程には異なる目標があります。

  • 第Ⅰ相試験は臨床試験の中で最も基礎的なものです。ここでは、治療時の投与量とどれくらいの頻度で投与することができるか(最大耐用量、MTD)を評価するために薬の試験が行われます。その治療が特定の病気に効くかどうかがわからないので、様々な病気の人々が登録されます。薬は、許容できない副作用(用量規制毒性、DLT)が出るまで、徐々に量を増やして投与されます。
  • 第Ⅱ相試験では、MTDとDLTに関する第Ⅰ相試験の結果を使用します。特定の疾患の患者グループに対して見込みがあると考えられるため、その治療は、第Ⅰ相試験で最も好ましい反応があった患者グループを対象に行われます。
  • 第Ⅲ相試験は、新たに診断を受けた際、米国ではほとんどの小児が参加して治療を受けるものです。これらの研究では、治癒率を上げるか副作用や晩期合併症を減らせる見込みのある治療法を標準治療(現在の最善の治療法)と比較して試験します。

お子さんは、2つ以上の治療法(”試験群”と呼びます)を比較する第Ⅲ相試験に参加することになるかもしれません。この場合、それぞれの治療が有効であることは他の研究によってわかっていますが、互いを比較はしておらず、現在における最良の治療法との比較もまだ行われていません。通常、1つの治療群は「標準治療」または現在における最良の治療法です。もう1つの治療群(新しい治療法)では、より多くの子どもの病気を治す、病気の進行をより遅らせる、副作用が起こる頻度を下げたり症状を軽減したりする、入院日数を短縮するといった目的のために、治療計画の一部を変更・追加しています。がんと診断された時に臨床試験が利用可能でなければ、お子さんは最良の標準治療を受けることになります。

第Ⅲ相試験では、どの治療群がより良いのかを明らかにするために、臨床試験に参加する患児がコンピュータによって無作為にどれか一つの治療群へと割り付けられます。患児を無作為に割り付けることは、それぞれの患児が公平で等しい確率でいずれかの治療群へと割り付けられることを保証するためのコイン投げ(コイン・トス)のような過程です。ほとんどの試験では、どの治療法がより良いのか、臨床試験に参加する全ての患児が治療を終えて数年間を経過観察しなければが明らかになりません。しかし、もし試験実施中にいずれかの治療が他群の治療より良いことが明らかになれば、試験は中止され、全てのお子さんに効果が高い方の治療が行われます。何らかの理由で治療計画がお子さんにとって最良でないことが明らかになった場合には計画が変更されます。

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単一の薬剤に関する研究

単一の薬剤に関する研究は、試験の目的に応じて多くの病院で行われる場合も少ない病院で行なわれる場合もあります。単一の薬剤に関する研究では、製薬企業が研究室での試験と薬剤使用による結果を綿密に監視し、研究期間中に少量の薬剤だけを提供します。これらの研究は通常、必要なデータを集め、かつ研究室の標本を迅速に移動できるような設備の充実した医療施設で行なわれます。

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支持療法に関する研究

支持療法に関する研究では、治療の副作用を軽減する方法を調べます。この研究も、数箇所の施設でその都度行われることもあれば、たくさんの病院で同時に行なわれる場合もあります。これらの研究における課題は非常に少ない患者によって結論を出すこともできます。一旦結果が共有されれば、患者の治療成績は全国規模の大きな研究を通じてよりも早く改善されるかもしれません。

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施設限定の臨床試験

臨床試験はごく少数の病院で行なわれることがあります。これらは施設限定臨床試験と呼ばれ、全国的な規模の臨床試験で必要とされるよりも少人数の患者さんで研究課題への結果を得ることができます。このような施設限定臨床試験を通じて、重要な研究課題に対する答えをより短い時間で得ることができます。米国小児がん研究グループ(COG)の施設限定臨床試験は、他の全ての臨床試験と同じ方法で確認が行われ、承認されています。

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パイロット試験

パイロット試験は施設限定臨床試験の一例です。この研究では新しい治療や治療法の組み合わせを調べています。その治療が対象とする病気に対して安全かつ有効であるかどうかを確かめるために、このような研究は限られた人数の患者に対してごくわずかな施設で行われます。新しい治療法が有効であるとわかった場合には、さらに多くの医療機関に公開されます。新しい治療の方がいくつかの点で優れているかどうかを確認するために、パイロット試験の結果は現在の最良の治療法と比較されます。パイロット試験はまた、試験中の薬剤や治療についてもっと多くの患者を使ってさらに調査すべきであるかどうかを決める際にも役立ちます。

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臨床試験における米国小児がん研究グループ(COG)の役割

がんの患児を治すために既にわかっている方法は、全て研究によって判明してきました。この知識の大半は米国小児がん研究グループ(COG)が発見してきました。実際、臨床試験によって患児を治療することで、COGは40年前には10%未満だった小児がんの治癒率を現在はほぼ80%へと改善させました。

COGの全メンバーは患児の治療のために最高のレベルを維持し続けなければなりません。彼らは、科学的知識、医学的知識、倫理を伴う科学的専門知識を証明するためにCOGが定義したプロトコールに従っています。新しいがん治療を開発するために、多くの患児から得たデータを組み合わせて素早く結果が得られるように、COGのメンバーは診断、治療および経過観察のデータを研究センターへ提出しています。米国では毎年60%以上の小児がんの患児が臨床試験のプロトコールに従って治療を受けています。これらの臨床試験では、標準治療と1つ以上の試験的な治療とを比較します。試験的な治療は、各種類のがんに対して最良の治療法を見つけるために注意深く開発されています。

患児がCOGのプロトコールに従って治療を受ける場合、診断、治療および結果に関する情報が全て収集、分析されます。また、臨床試験の結果は米国小児がん研究グループ(COG)の全てのメンバーが確認できるように公表されます。COGはその後、この知識を基に研究の次の段階を決定します。 (※訳注:がんの化学療法は、がんの種類や病期などに応じて様々な治療法が存在します。抗がん剤の組みわせ・投与量・投与回数・投与間隔・投与方法などを定めた治療計画を「プロトコール」と呼びます。「レジメン」と呼ばれる場合もあります。)

米国小児がん研究グループ(COG)の功績

米国では毎年約13,500人の小児および10代の少年少女ががんと診断されていますが、小児がんには様々な種類があります。

特定の種類ごとに分類すると、各種類の患児の数は比較的少なくなります。研究では、結果が有意であることを保証するために患者数の多さが重要です。同じ臨床試験に多くの病院からの患者を登録することによって、結果が統計的に有意になります。この取り組み方法は「共同研究」と呼ばれ、COGが果たしている機能そのものです。

COGはおよそ100の異なる共同研究を一度に行なっています。そのうち常時約85が治療関連の臨床試験で、残りの15がその他の臨床試験です。COGはこれまでの歴史で他のいかなる組織よりも多くのがんの患児を治療し、過去40年間にわたり治療法と治癒率に多くの改善をもたらしてきました。しかしその最大の功績は、共同研究のモデルを開発したことにあるかもしれません。

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