急性骨髄性白血病(AML)の治療

INDEX

化学療法がAMLの治療の中心です。
化学療法の最初の1コースを行った後、骨髄中に白血病細胞が見つからない状態(この状態を寛解(かんかい)と呼びます)であっても、1コースの化学療法だけで治癒する患児はごく稀であることがわかっています。したがって、長期間にわたる治癒を望むのであれば、複数コースの化学療法を行う必要があります。化学療法の期間は通常4~5ヶ月です。最初の化学療法の後で骨髄移植を受ける患児もいます。

治療のために選択される薬は、綿密な診断に基づいています。AMLの化学療法は、経口投与か、あるいは静脈、筋肉、中枢神経系への注入で行います。通常、AMLの化学療法は段階的に行われます。

寛解導入療法: 治療の最初の段階です。この段階の目標は、白血病細胞を破壊して、正常な血球が戻れるようにすることです。治療の「標的」は突然変異を起こした異常な白血球ですが、通常、化学療法では全ての白血球(正常な白血球も突然変異している白血病細胞も)をゼロになるまで減らします。健康な骨髄が再生するまでには数週間を要します。この期間中は感染のリスクが大きいため、正常な白血球が再生したという確証が得られるまで入院が必要です。この段階の最後に骨髄穿刺が行われます。顕微鏡で採取した骨髄標本を調べますが、正常な細胞だけが見つかることが予想されます。この状態を寛解(かんかい)と呼びます。追加治療を行わないと再発してしまうので、寛解は治癒したことを意味するわけではありません。この治療段階は通常4週間続きますが、正常な血液細胞の回復具合によってはさらに長くかかる場合もあります。

持続療法: 体内に残っている全ての白血病細胞を破壊するための第二段階の治療です。この治療段階は通常約4~6週間続きます。再び感染のリスクが大きくなるので、感染とたたかうことができるだけの正常な白血球が回復するまで入院が必要です。

強化療法: 残っている白血病細胞を破壊させるための追加的な化学療法です。この治療段階は通常約8~12週間続きます。

ほとんどの患児は、強化療法の後で白血病の徴候や症状がなくなり、寛解状態を維持していることでしょう。AMLの患児のおよそ50~60%が標準治療によって治癒します。

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造血幹細胞移植または骨髄移植(BMT)

白血病が低リスク群である場合を除き、移植のための組織のタイプ(※訳注)が合う家族(兄弟、姉妹、両親など)がいれば、最初の寛解中に骨髄移植をすすめられるかもしれません。寛解状態が続く可能性は、化学療法のみの場合よりも移植をした方が高くなります。患児の兄弟姉妹(あるいは時に両親)は組織のタイプが適合するかどうかを確認するための血液検査を受けます。

(※訳注:移植のための組織のタイプは血液型のようなもので、組織適合抗原、ヒト白血球型抗原、HLA型などとも呼ばれます。)

患児が最初の化学療法で寛解に達していない場合には、血縁関係のないドナーからの移植を勧められることがあります。血縁関係のないドナーからの移植に伴う副作用のリスクは組織のタイプが適合する親族からの場合よりも高いので、この移植は再発リスクが高い患児だけに検討されます。

以下のような例外を除いて、患児は皆同じ治療を受けます。

  • ダウン症候群: 一般的にダウン症候群の場合は、治癒のための強化療法は少なめに行います。
  • 急性前骨髄球性白血病: この病気の患児は、米国ではオールトランス型レチノイン酸を使った化学療法を受けます。この白血病は特有の治療によく反応するので、一般的に最初の寛解中に骨髄移植を受けることはありません。
  • リスク群の特徴:
    • AMLの高リスク群は標準的な化学療法にあまりよく反応しません。これらの患児は最初の寛解中に骨髄移植を受けます。
    • AMLの低リスク群は化学療法によく反応します。移植のための組織型が適合する家族がいたとしても、最初の寛解中に骨髄移植を受けるように勧められることはありません。
  • 診断時に中枢神経系白血病(脳脊髄液中に白血病細胞が存在する):一部の患児は、脊髄穿刺で採取した脳脊髄液の中に芽球(白血病細胞)が存在します。このような患児は、中枢神経系に浸潤した白血病細胞を破壊するために、抗がん剤を腰椎穿刺(脊髄穿刺)で脳脊髄液中に投与する特別な化学療法を受けます。

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再発

白血病が再発する場合、通常は最初の診断から2年以内に起こります。寛解に戻すために追加の化学療法が行われます。臨床試験にはAMLの患児にとって有益な新しい治療法があるかもしれません。利用可能かどうかを主治医に相談しましょう。新たな寛解を達成できたら、その寛解を維持するために骨髄移植を検討します。血縁者にドナーがいない場合には血縁関係のないドナーを探します。

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AMLの原因

現在のところ、AMLがなぜ起きるのかという原因はわかっていませんが、リスク要因がほんの少しだけわかっています。

遺伝子の状態

特定の遺伝的疾患(症候群)のお子さんは、他の子に比べて骨髄細胞がAMLに通じる突然変異を起こしやすい傾向があります。それは、ダウン症候群、Fanconi(ファンコニ)症候群、神経線維腫症1型、Bloom(ブルーム)症候群、Schwachman症候群(シュバックマン症候群、シュワックマン症候群)、家族性7番染色体モノソニー、および重症先天性好中球減少症(コストマン 症候群)の患児です。このような遺伝性疾患のある子どもはAMLの発症リスクが通常より高くなりますが、ほとんどのAMLの患児にはこのような遺伝性疾患はありません。これらの遺伝性疾患は受診を必要とするので、お子さんがそうしたケースであるかどうか親御さんには必然的にわかります。

電離放射線(X線検査)

以前の研究では、母親の子宮にいる間にX線検査を受けるとALLのリスクが高まるとされていました。しかし今日では、妊娠中のX線検査がALLの原因となるとなることはほとんどないと研究者は考えています。なぜなら、妊娠中の女性が頻繁にX線検査を受けることはありませんし、あったとしても以前に比べるとX線量が極めて低くなっているからです。 骨折や虫歯でX線検査を受けたお子さんにAML発症のリスクが増すことはありません。AMLを引き起こすには、はるかに高いエネルギーの放射線や、放射線量の累積が必要です。

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臨床研究(臨床試験)

米国では、がんの患児の大部分が臨床研究(臨床試験)に参加しています。このような参加率の高さは小児がんの治癒率を改善するのに不可欠です。 研究者は、治療法を改善し、かつ、がんの性格とその原因について理解を深めるために様々な研究を計画します。臨床試験は慎重に審査され、誰でも登録できるようになる前に正式な科学的手順を経て承認されなければなりません。登録中の臨床試験で、お子さんに“適格性がある”場合には、参加するように依頼されるかもしれません。複数の研究に参加するように依頼されることもあります。

特定の研究への適格性があるかどうかは、年齢、がんの部位、病気の広がりやその他の情報によって判断されます。通常、科学的に有効な研究を行うために研究者は研究対象者が的確かどうか厳密に調べなければなりません。さらに研究者は研究の間、厳密に同じ制約に従わなければなりません。

患児に複数の研究(臨床試験)への適格性がある場合、主治医はそのことについてインフォームド・コンセントのための面談(カンファランスと呼びます)を開いて親御さんと話し合います。親御さんがお子さんを研究に参加させたいと思っているか否かに関係なく、主治医は参加することによる潜在的なリスクや、親御さんが決断するために必要なその他の情報について説明してくれます。研究に参加するかどうかをいつでも選択することができます。

お子さんを研究に参加させることを選んだ場合、主治医はその研究の結果からどのような情報を得ることができるのかを説明します。研究の最終的な結果は、一般の方および他の研究者に知らせるために公表されます。どのような研究においても個人が特定されるような情報は公表されません。

様々な種類の研究について詳しく知るためには、このウェブサイトの臨床研究(臨床試験)の項目を参照してください。

米国版の更新時期: 2011年7月
日本版の更新時期: 2012年3月

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