食事と運動
小児がんを経験したことによる栄養面や身体的活動への影響は、人によって異なります。小児がん経験者には体重が増えなくて苦労する人もいれば、逆に増えすぎて困る人もいます。生活の中でどれくらい運動できるかについても同様です。何を食べ、どの程度の頻度で運動するのかについて正しい選択をすることには多くのメリットがあります。
正しい食事をして活動的に過ごすべき理由
正しい食事をして、定期的に運動することは、心身両面にとって良いことです。そのメリットは以下の通りです。
- がんとその治療によって影響を受けた組織や器官の治癒を促す
- 体力と持久力を作る
- 成人になってからがんやその他の病気を発症するリスクを減らす
- ストレスが減って幸せな気持ちでいられる
正しい食事方法
健康的な食事とは、その大半が果物、野菜、全粒粉(※)や玄米などの穀類、無脂肪か低脂肪のミルクや乳製品で構成され、さらに肉類、魚、豆、卵、ナッツ類が含まれます。
(※訳注:「全粒粉」とは、通常の小麦粉では取り除かれる種皮(ふすま)や胚芽等も含めた粒全体を粉砕して粉にしたものです。)
また、それと同時に飽和脂肪(※)、トランス脂肪(※)、コレステロール、塩分、余分な糖分は控えるべきです。
(※訳注:「飽和脂肪」「トランス脂肪」はいずれも特定の化学的特性を持つ脂肪の一種です。通常「飽和脂肪」は室温では固体で、多くが動物性ですが、ヤシ油やココナッツオイルなどの一部の植物油にも多く含まれます。「トランス脂肪」は、スナック菓子、揚げ物、マーガリン、パンや洋菓子に使われるショートニングなどの加工食品に含まれています。これらを摂取すると血中コレステロール値が上昇し、心疾患のリスクなどが高まります。)
健康的な食事を摂るためには以下を参考にしてください。
- 全ての食物群からいろいろな食品を選びましょう。(米国では、個人的な栄養摂取計画を支援するサイト http://www.choosemyplate.gov があります。)
- 食事の半量以上を野菜と果物で摂るようにしましょう。
- 糖分控えめか無糖の食品や飲料を選びましょう。
- 穀類の少なくとも半量以上は、精製されていない全粒粉や玄米で摂るようにしましょう。
- 固形の脂肪分(例:肉の脂身、バター、ショートニングなど)が少ない食品を食べましょう。
- 牛乳を低脂肪乳か脱脂粉乳に変えましょう。
- 塩漬け、燻製、炭火焼などの焦げ目をつけた食品、漬け物などを控えましょう。
- アルコール飲料は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までに控えましょう。
体重を減らす必要がある場合は、かかりつけの医療機関のスタッフや栄養士に相談しましょう。ダイエットの計画作成を手伝ってくれます。ダイエットを始める前に、計画が適切な内容であるかどうか、以下の点を確認してみましょう。
- 現実的な、達成できる目標体重を設定していますか?
- 数週間や数ヶ月間だけはなく、これからの人生でずっと楽しめる食品が食事の中に含まれていますか?
- そのダイエット食にはいろいろな食品が含まれていますか?
- 行きつけの食料品店は、その食品を配達してくれますか?
- 生活スタイルや毎日の予定、予算に合う計画になっていますか?
- 体重を減らすために生活スタイルを変える必要がありますか?
また、ダイエット用のサプリメントやハーブなどは、いかなるものであっても飲む前にかかりつけ医に相談してください。なぜなら、こうした製品の全てが本当に健康的であるとは限らないからです。
必要な運動量
米国がん学会は、活動的に身体を動かす生活スタイルを推奨しています。これは成人なら週に5日以上、1日につき少なくとも30分間、ウォーキング、サイクリング、ガーデニングなどで身体を動かすことを意味します。小児や若者は週に5日以上、1日につき少なくとも1時間、ランニング、ホッピング(※)、ダンス、水泳などをして身体を動かすべきです。
(※訳注:ホッピングとは、スプリングのついた一本足の乗り物です。)
10分程度の短時間に行う激しい運動は、身体的な活動目標にプラスになります。スポーツジムに行かなくても活動的に過ごせる方法は以下の通りです。
- エレベーターの代わりに階段を使いましょう。
- 仕事や用事の時は自転車に乗りましょう。
- スポーツのチームに入りましょう。
- ガーデニング、洗車、芝生刈り、家具の塗装、物置きの片付けなどを行いましょう。
- テレビを見たり新聞を読んだりする時は、室内で使える運動器具(固定式の自転車や踏み車など)を使いましょう。
- 外食や映画に行く代わりに、家族でハイキングやサイクリングに出かけましょう。
活動的に過ごすための方法
まず初めに、どのような活動をしたいかを決めなければなりません。運動の計画を立てる時は、以下の項目について確認してみましょう。
- 立てた目標は、現在の体力・持久力から見て現実的なものですか?
- その活動は安全ですか?
- 計画内容が生活スタイルや予定に合っていますか?
- その活動に特別な機材や防具は必要ですか?予算内で費用を賄えますか?
- 特別な事情で、そのスポーツや活動の内容を変更する必要はありますか?
- そのスポーツや活動を楽しめますか?
とにかくまずは活動してみるつもりならば、下記のアドバイスを参照してください。
- ゆっくりと始めましょう。激しすぎる運動や肉離れの危険がある運動はしないでください。
- 運動する時は、ウォーミングアップから始めて、クールダウンで終えてください。
- 疲れを感じるまで、しかし痛みを感じない程度に運動しましょう。
- 鍛えたい筋肉を選んで、それを動かす運動をしましょう。
- 身体の異なる部分の筋肉を動かすために複数の運動を代わる代わる行いましょう。
- ケガをしないよう、適切な用具と靴を使いましょう。
- トレーニングの期間と度合いはゆっくりと増やしてください。1週間につき10%以上増やしてはいけません。
身体的なハンディキャップがある場合
ハンディキャップがあっても、理学療法士や作業療法士の手を借りて調整すれば大部分の活動に参加することができます。特別な機材を調達するためには、ソーシャルワーカーが保険による保障やその他の方策を探すのを手伝ってくれるでしょう。また、保健所や地元の共同体にハンディキャップがある人のための運動プログラムがあるかもしれません。
米国では、ハンディキャップと身体的な活動の詳細について専門の国立センターのウェブサイト http://www.ncpad.org(※訳注:英文サイト)で情報を提供しています。
運動やレクリエーションなどを始める前に
新たに運動を始めたりスポーツやレクリエーション活動に参加したりする前に、担当の医師に相談してください。医師は病歴に基づいて問題なくできる活動と避けるべき活動を教えてくれます。