慢性疼痛
がんの治療を受けている間、がんそのものや治療の影響で多くの人が痛みを感じます。大部分の人は治療が終われば痛みも止まりますが、痛み続ける人もいます。特に、放射線治療、手術、特定の抗がん剤や副腎皮質ステロイドによる治療を受けた場合、骨・関節・神経の損傷などによって痛みが長期間生じることがあります。
慢性疼痛とは
「慢性疼痛」とは、その原因となった病気やケガが治った後も続く痛みのことです。身体が痛みの信号を送ったり受け取ったりする方法が治療によって変わってしまったせいで、がんが治った後も痛みが続きます。慢性疼痛は急性の痛みとは異なります。急性の痛みは、ケガや病気に対して身を守る必要があることを自分自身に知らせる役割を果たしており、通常は痛みの期間が短いのが特徴です。
痛みを左右する要因
痛みは、患者さん個人における多くの要因(身体の状態・気持ち・考えなど)の影響を受けます。その結果、人によって感じる痛みが異なります。同じ状況であっても、ほとんど痛みを訴えない人がいるのに対して、強い痛みを感じる人もいます。
年齢、性別、発達段階、家族の習慣や文化的な伝統、過去の痛みの経験、労働環境、受傷時の状況などの要因も、その人がどのように痛みを表現し、対処するかに影響します。
慢性疼痛が及ぼす影響
今ある痛みに対処する有益な方法がみつからず、がっかりしている方がいらっしゃるかもしれません。特に、以前なら楽しんでいたことをする時に痛みを感じるようになると、失望したり怒りを覚えたりするものです。
自分の人生が痛みに左右されていると感じると、人は無力感を覚え、自尊心を持てなくなり、成長につながる挑戦やチャンスを得るための努力をしなくなってしまいます。つまり、それをきっかけに痛みが起きたり、痛みがもっとひどくなったりすることを恐れて、活動したり運動したりするのをやめてしまうことがあるのです。しかし、活動しなくなると、筋肉がさらに弱ってしまい、かえって痛みを悪化させる可能性があります。
痛がったり痛みに耐えたりしているところを他人に見られたくないために、社会的な活動から退いてしまう人もいます。そのせいで憂うつ感、不安感、慢性的なストレスが起こり、痛みをさらに悪化させる可能性もあります。
慢性疼痛がある場合
慢性疼痛を管理し、痛みに対処する方法はいくつかあります。薬物治療や行動療法、またはその両方によって痛みを軽減することができます。
痛みを和らげる方法の訓練を行うと、自信を高め、苦痛を減らすのに役立ちます。痛みに対してどう対処するか、そして、痛みをどう考えるかが変われば、以下のような前向きな行動にもつながります。
- 運動量が増える
- 活動する頻度が改善する
- 医療をより信頼できるようになる
- 社会的な活動への参加が増える
痛みを和らげるための治療法や訓練などは以下の通りです。
- リラクゼーション
- 瞑想
- イメージ療法
- 気晴らし
- 思考の転換
- 痛みや痛みが意味することへの考えや信条を変える
その他に効果的な方法としては、支援グループに参加したり、マッサージを受けたり、音楽を聴いたり、痛みの管理や痛みを和らげるための生活改善を目的としたカウンセリングを受けることなどがあります。
【参考情報】
慢性疼痛に関する詳細な情報は、以下の組織のウェブサイトにも掲載されています。(※訳注:全て英文サイトです。)
- American Chronic Pain Association(米国慢性疼痛学会) :
http://www.theacpa.org - The Mayday Pain Project(メイディ疼痛プロジェクト):
http://www.painandhealth.org - American Pain Society(米国疼痛学会):
http://www.ampainsoc.org