治療方針の決定

 この面談では、親は患児の治療についての決断を求められるでしょう。治療法の選択肢の中には臨床試験への参加も含まれているかもしれません。どのような治療法があるか、臨床試験とは何か、どれを推奨されるのか、その理由は何か、などを医師が説明します。
同意書のコピーを渡されたら、読んで保管しておきましょう。治療計画、その治療の利点とリスク、医療的処置、患児と家族に必要なこと、などが書かれています。

 治療に関する決定については、決めるまでにどのくらいの時間があるのかを主治医と相談しましょう。患児の状態によって、すぐに治療を始めなければならない場合があります。一方で、数日間から数週間かけて治療方法を決めてよい場合もあります。親に意思決定の時間がどのくらい許されるのか、必ず主治医に聞いて確認しましょう。治療法の選択と決断をサポートしてくれるよう、主治医、看護師、その他のスタッフに相談してもよいでしょう。
 主治医は、親にはよく考えて決めて欲しい、というだけではなく、患児のための適切な治療開始時期を知っておいて欲しいのです。

なぜ親が治療方針を決定するのでしょうか?

 親は、「がんの専門知識がある医師が、患児の治療方針を決めるべき」と思うかもしれません。通常、患児が18歳以下(高校生以下)ならば、すべての医学的な処置には保護者の同意や書面への署名が必要となります。医師は推奨する治療計画とその理由、利点とリスクを説明します。親は、すべて理解して、同意に確信を持つまで、何度でも質問をしましょう。 「もし先生が私の立場だったら、どの治療を選びますか?」という聞き方もあるでしょう。主治医は、推奨する治療計画とその理由を教えてくれます。
親の役割は、治療における利点とリスクを十分に話し合って決断を下すことです。

何を決めるのでしょうか?

 主治医は親に、患児のがんに応じた最も効果的な治療について説明します。治療計画、または、複数の治療を比較する研究(臨床試験)を説明する場合もあります。参加可能な臨床試験があれば、それが標準治療とどのように異なるのか、どのような結果を期待する研究かを説明します。
 そして、主治医が親に、治療計画、あるいは臨床試験に参加するかを聞きます。臨床試験がある場合は、臨床試験の一環としてどの治療計画を受けるか、ではなく、患児に試験に参加させるかどうか、だけを決めることになります。

パートナーと意見が合わない場合は

 患児の親はそれぞれ異なる反応を示すことが多く、意見が相反する場合があります。このような場合は、建設的な話し合いを進めるために、主治医や看護師に 「誰か間に入ってもらった方がよいか」 を相談してみましょう。ソーシャルワーカーや心理療法士など、コミュニケーションに関する訓練を受けている人を紹介されることがあります。
 また、お互いの立場になって、自分との違いを理解しようとすることも大切です。ふたりとも、わが子にとっての最善を望んでいることを忘れないようにしましょう。そうすれば、イライラしたり怒っている時にも救いになります。ほとんどの親は、がんになる前はわが子の生死に関わる決定に迫られたことがありません。親同士がショックと悲しみを感じ、それぞれが異なる反応をするのは自然なことです。その事実をお互いに認めることが大切です。

 家族や友人に話すことで、心の中にたまっている気持ちを発散することもあります。自分自身のストレスを減らしておくと、パートナーと話しやすくなります。気分を切り替えるために休息を取ったり、散歩したり、パートナーとは同じ目標に向かっていることを思い出しながら、少しの間だけでもひとりになってみましょう。
「共通の敵はがん」なのです。

 また、同じ経験をした他の家族と話すことが役に立つ、と感じる親もいます。会員制のオンラインサイトなどで他の親とつながり、感情やさまざまな問題を整理する人もいます。また、看護師やソーシャルワーカーに、病院内のサポートグループや、他の家族を紹介してもらうこともできます。

日本語版更新:2020年6
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