腎摘除術後の健康管理

腎臓は、血液から老廃物を濾しとり、血圧を一定に保ち、そして赤血球の生成を活性化するという重要な役割を担っている、生命維持に不可欠な臓器です。小児がんの治療では、時として片方の腎臓を取り除く必要があります(腎摘除術)。残ったもう片方の腎臓だけでも健康な生活を送ることはできますが、できる限り健康を保つためには、残っている腎臓をまもるための方法を実行することが大切です。

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推奨される経過観察

  • 少なくとも年一回、定期検査を受けましょう。この検査には、血圧測定、腎機能を調べるための血液検査(血中尿素窒素濃度(以下、BUNと記載)、血清クレアチニン値)、および尿検査が含まれていなければなりません。
  • 検査の結果、血圧が高かったり、BUNや血清クレアチニン値、または尿検査の数値に異常が見られたりした場合には、血中の電解質(塩分などの無機質)濃度を調べるための血液検査とクレアチニン・クリアランス 、もしくはGFRスキャンを受けなくてはなりません。クレアチニン・クリアランスとは、時間を測って行う尿検査です。GFRスキャンとは、微量の放射性物資を静脈から注入して腎臓の機能を調べる特殊なX線検査のことです。これらの検査で何らかの問題が見つかった場合には、腎機能を経過観察するため、検査を定期的に受ける必要があります。
  • 血圧が高い、タンパク尿(※訳注:尿中のタンパク質の量が正常値よりも高い状態のこと)、あるいは腎機能の悪化を示すその他の徴候が見られた場合には、腎臓病を専門にしている小児科医・内科医・泌尿器科医などに診察してもらう必要があります。

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腎臓を健康に保つ方法

  • 水をたくさん飲みましょう。特に、スポーツをする時、直射日光が当たる屋外にいる時、そして気温が高い時に必要です。
  • 尿路感染症の症状(排尿時の焼けるような痛み、頻尿、急に差し迫った尿意を感じる場合)が現れた時は、直ちにかかりつけ医に連絡しましょう。
  • 処方薬、市販薬、天然ハーブなどの種類を問わず、いかなる薬も服用する前にかかりつけの医師や薬剤師に確認しましょう。担当医や薬剤師に対しては、腎臓が一つしかないということを確実に伝えておく必要があります。
  • 抗炎症剤は、非ステロイド系のものを注意深く使いましょう。処方薬・市販薬の別を問わず、アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、ナプロキセンなどの鎮痛剤や解熱剤は非ステロイド系抗炎症剤ですが、これらの薬は腎臓に問題を生じさせる(鎮痛薬性腎症)ことがわかっています。特に、過剰な量を摂取した時、2種類以上の薬をカフェインやコデイン(※訳注:コデインは、局所麻酔、鎮咳、下痢止めの作用を持ち、しばしばアセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェンと共に調合されて商品化されています。)と一緒に摂取した場合、長期間にわたって服用した場合にはなおさらです。痛みを抑えるために長期間にわたって鎮痛薬を服用する必要がある場合には、かかりつけ医と別の方法がないかについて話し合い、腎臓に有害でない薬を選ぶようにしましょう。
  • 少なくとも年一回の定期検査で、血圧測定、タンパク質量を調べるための尿検査、腎機能を測定するための血液検査を受けましょう。
  • 医療関係者の中には、腎臓が一つしかない人は接触を伴うような激しいスポーツを避けた方が良い、もしくはこうしたスポーツに参加する際には腎臓をガードする防護具を付けるべき、という意見の人もいます。スポーツや娯楽活動に参加することを決める前に、残っている腎臓の状態について必ず主治医と話し合ってください。
  • 腎臓の外傷の主な原因は、車やオートバイ、自転車(特にハンドルでの負傷)による事故、および、高所からの落下事故です。このため、できる限り外傷から腎臓を護るためには、車に乗るときにはシートベルトを正しい位置で締めること(ウエスト周りでは無く、腰の骨にきちんとかかるようにベルトを締める)、また、自転車やバイクは普通に乗る(レースや曲乗りをしない)ことが大切です。もし事故に巻き込まれて、腎臓の損傷が疑われる時は、直ちに病院を受診しましょう。

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腎臓の問題のリスク要因

腎機能に問題を引き起こすことがある小児がんの治療は、以下の通りです。

  • 腎臓への放射線治療
  • 腎機能に影響を及ぼす可能性がある化学療法(シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、イホスファミド、またはこれらの組み合わせ)
  • 腎機能に影響を及ぼす可能性がある薬物療法(抗生物質または移植片対宿主病(GVHD)の治療に使われる薬)

さらに、腎不全の可能性が高まるリスク要因は以下の通りです。

  • 高血圧や糖尿病などの持病がある健康状態
  • 頻繁な尿路感染症、尿の腎臓への逆流(膀胱尿管逆流症)、膀胱の摘出(膀胱摘除術)など、泌尿器系に問題がある場合

このようなリスク要因がある場合には、「腎臓の健康」も参照してください。

Wendy Landier [RN, MSN, CPNP, CPON] City of Hope National Medical Center

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