肝芽腫などの小児肝がんの治療
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肝がんには多くの治療法があります。肝芽腫と肝細胞癌では異なる方法で治療が行われます。どちらのがんも治療の成功に完全な外科的切除が必要な点は同じですが、化学療法に対する反応が異なります。肝芽腫は化学療法によく反応しますが、一方、肝細胞癌は通常手術のみで治療を行います。
手術: 腫瘍を取り除く手術が肝がんの治療には最も重要な手段です。手術ではがん細胞がある部分の肝臓を切除します。がん細胞が身体の他部位まで転移している場合には、転移巣についても手術で切除することがあります。肝がんで最も多い転移部位は肝臓の周囲組織と肺または脳です。
化学療法: 化学療法ではがん細胞を破壊する薬を使います。化学療法は、がんを手術で取り除けるように小さくしておくために手術前に行うか、残ったがん細胞を全て破壊するために手術後に行います。肝芽腫は通常化学療法に非常によく反応しますが、肝細胞癌は化学療法に対する抵抗力が非常に強いです。シスプラチン、ビンクリスチン、5-フルオロウラシル、アドリアマイシンを組み合わせて治療します。
塞栓療法: 血流を通じての全身的な化学療法が効かない場合には、薬剤を使った塞栓療法を行うことがあります。この治療は抗がん剤を腫瘍に直接注入することを意味します。肝がんの塞栓療法(腫瘍への血液の流れを止めたり遅くしたりする治療)では、肝臓に血液を送り届ける大動脈へ抗がん剤と一緒に塞栓物質を注入します。これによって血管を通じて腫瘍に栄養素が供給されるのを防ぎ、抗がん剤ががん細胞を破壊するための時間も確保します。
肝移植: がんが肝臓全体に広がっているか、がんを摘出すると正常な肝臓を十分に残すことができない場合には、健康な肝臓の一部を移植します。肝臓移植を受けた患者は、それ以降、免疫系の働きを抑えるために薬物治療を受ける必要があります。
がん克服に影響する因子
治療に影響する因子や治癒率は以下の通りです。
1. 腫瘍の完全切除
手術で腫瘍を完全に取り除くことができる患児は治癒する可能性が最も高いと考えられます。診断時に腫瘍を完全に切除できない場合は、完全切除の可能性を高めるために、手術前に腫瘍を小さくしておくための化学療法を行うことがよくあります。
2. 胎児型肝細胞で占められている腫瘍
生検または腫瘍摘出術後に病理医が腫瘍組織を検査し、がん細胞が胎児肝細胞に似ているかどうかを判定します。完全に切除できる場合には、この腫瘍の患児は良好な治癒率を残しています。
3. がんの病期
初期段階(病期ⅠまたはⅡ)であれば治癒が比較的容易です。しかしながら、肝がんの70%は診断の時点で進行した状態(病期ⅢまたはⅣ)です。
4.AFP(アルファ・フェト・プロテイン)の生成
ほとんどの肝がんは”AFP”と呼ばれるタンパク質を生成します。診断時のAFP値が異常に高く、最初の化学療法で急速にその数値が下がった患児は、良好な治癒率を残しています。AFPが正常値か、ほんのわずかだけ高い患児に対しては別の治療を行う必要があります。
臨床研究(臨床試験)
米国では、がんの患児の大部分が臨床研究(臨床試験)に参加しています。このような参加率の高さは小児がんの治癒率を改善するのに不可欠です。 研究者は、治療法を改善し、かつ、がんの性格とその原因について理解を深めるために様々な研究を計画します。臨床試験は慎重に審査され、誰でも登録できるようになる前に正式な科学的手順を経て承認されなければなりません。登録中の臨床試験で、お子さんに“適格性がある”場合には、参加するように依頼されるかもしれません。複数の研究に参加するように依頼されることもあります。
特定の研究への適格性があるかどうかは、年齢、がんの部位、病気の広がりやその他の情報によって判断されます。通常、科学的に有効な研究を行うために研究者は研究対象者が的確かどうか厳密に調べなければなりません。さらに研究者は研究の間、厳密に同じ制約に従わなければなりません。
患児に複数の研究(臨床試験)への適格性がある場合、主治医はそのことについてインフォームド・コンセントのための面談(カンファランスと呼びます)を開いて親御さんと話し合います。親御さんがお子さんを研究に参加させたいと思っているか否かに関係なく、主治医は参加することによる潜在的なリスクや、親御さんが決断するために必要なその他の情報について説明してくれます。研究に参加するかどうかをいつでも選択することができます。
お子さんを研究に参加させることを選んだ場合、主治医はその研究の結果からどのような情報を得ることができるのかを説明します。研究の最終的な結果は、一般の方および他の研究者に知らせるために公表されます。どのような研究においても個人が特定されるような情報は公表されません。
様々な種類の研究について詳しく知るためには、このウェブサイトの臨床研究(臨床試験)の項目を参照してください。
米国版の更新時期: 2011年9月
日本版の更新時期: 2012年3月