消化器系の健康
小児がんの治療によって腸などの消化管が傷ついたり、その他の問題が生じたりする場合があります。消化管は胃腸管系とも呼ばれ、食物を分解・吸収する臓器から成っていて、成長や身体を維持するためのエネルギーを得る働きをしています。
(※訳注:「消化管系」とは、胃、小腸、大腸など、実際に食べた物を通過させながら、分解・吸収する臓器群のことです。一方、「消化器系」とは、「消化管系」のほかに肝臓や膵臓などまで含めた、消化・吸収に関連する全ての臓器群を指します。)
消化器の問題のリスク要因
小児がんに対する特定の治療によって、消化器系に問題が生じるリスクは高くなります。特定の治療とは、主に腹部や骨盤における手術、および頚部・胸部・腹部・骨盤への放射線治療です。
消化器系に問題が生じるリスクが高まるその他の要因は、以下の通りです。
- 過去に腸が傷ついたことがある(癒着)か、腸閉塞(腸の通過障害)になったことがあるか、または腸管に慢性GVHD(移植片対宿主病)の症状がある場合
- 家族に胆石または大腸がんや食道がんの人がいる場合
- 喫煙の習慣がある場合
消化器系に起こり得る問題
起こり得る問題は、手術部位や、放射線治療を受けた部位と照射線量により異なりますが、以下の通りです。
- 腸閉塞
- 食道(口から胃まで食物を運ぶための管)が瘢痕化して狭くなる
- 胆石
- 肝臓の硬化と瘢痕化
- 腸の炎症による慢性的な下痢および胃痛
- 大腸がん (詳細は「二次性の大腸癌」のページを参照してください)
問題となる症状
消化器系に問題がある場合の症状は以下の通りです。
- 慢性的な胸やけ
- 嚥下困難または嚥下痛
(※訳注:「嚥下」は「えんげ」と読み、「飲み込むこと」の意味です。) - 慢性的な吐き気または嘔吐
- 胃痛
- 慢性的な下痢
- 慢性的な便秘
- 黒色のタール状の便、または血便
- 体重減少
- 食欲の変化
- 腹部の膨張または腹部膨満感(※訳注:「腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)」とは、お腹がふくらんだような感じがすることです。)
- 黄疸:白眼や皮膚が黄色に変色すること
(「肝臓の健康」のページを参照してください。)
これらのうちいずれかの症状がある場合は医師の診察を受けてください。その症状が急に現れたり深刻だったりする場合には、すぐに主治医に連絡してください。
推奨される経過観察
消化器系に問題が生じるリスクがあるか、すでに問題が生じている小児がん経験者は、信頼のおける医療機関で健康診断を毎年受けるべきです。その際には血液検査、X線検査、便潜血検査などが必要です。胆石など胆嚢に問題があると疑われる場合には、超音波検査も必要になります。また、大腸や食道の状態を確認する必要がある場合には、大腸や胃の内視鏡検査も受けることになるかもしれません。
健康を保つために
消化器系に問題を生じるリスクは、健康的な生活スタイルを心がけることで減らすことができます。
正しい食事
正しい食事をするために、以下の注意事項を守りましょう。詳細については、「食事と運動」のページを参照してください。
- 全ての食物群からいろいろな食品を選びましょう。
(※訳注:米国には、栄養摂取の計画を立てるのを支援するサイトhttp://www.choosemyplate.govがあります。) - 食事の半量以上を野菜と果物で摂るようにしましょう。
- 糖分控えめか糖分無添加の食品や飲料を選ぶようにしましょう。
- 穀類の半量以上は、精製されていない全粒粉や玄米で摂るようにしましょう。
(※訳注:「全粒粉」とは、通常の小麦粉では取り除かれる種皮(ふすま)や胚芽等も含めた粒全体を粉砕して粉にしたものです。) - 固形の脂肪分(例:肉の脂身、バター、ショートニングなど)は控えましょう。
- 牛乳を低脂肪乳か脱脂粉乳に変えましょう。
- 塩漬け、燻製、炭火焼などの焦げ目をつけた食品、漬け物などを控えましょう。
がんの原因となる習慣をやめる
大量に飲酒する人(このうち、特に喫煙する人)は、消化器系にがんなどの問題を生じるリスクが高い傾向があります。リスクを減らすためには以下の注意事項を守りましょう。
- 禁煙しましょう。
- 受動喫煙もできる限り避けるようにしてください。
- 飲酒する場合は、1日に2杯までとしてください。