網膜芽細胞腫の診断

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網膜芽細胞腫は約2万人に1人の割合で発症する希少な小児がんです。この病気は4歳未満の小児に最も多く発症し、米国では14歳未満の小児がんの患児全体の2.8%を占めています。網膜芽細胞腫は網膜と呼ばれる眼球の一部にできます。網膜は、人が物を見ることを可能にする、眼の後部を覆っている神経組織の薄い層です。網膜を形成する細胞を作るために、妊娠中と誕生直後には網膜芽細胞(網膜の未熟な細胞)が増加し、小児期に、細胞が成熟して分化と呼ばれる段階になります。網膜芽細胞腫は1つの眼球にできる場合(片側性網膜芽細胞腫)と両方の眼球にできる場合(両側性網膜芽細胞腫)があります。

網膜芽細胞腫には以下の2つの種類があります。

遺伝性網膜芽細胞腫

米国では患児の25%に遺伝性の網膜芽細胞腫が発症します。この患児たちは、身体の全細胞において一対のRB1遺伝子の片方に生まれつき変異があり、網膜の細胞も例外ではありません。もう片方の遺伝子にも変異が生じると、網膜芽細胞腫が発生します。このような遺伝性の場合、全ての細胞がRB1遺伝子変異をはじめから1つ持っているので、もう片方の遺伝子にも比較的変異が生じ易いのです。遺伝性の患児のほとんどは、両眼に網膜芽細胞腫を発症します(両眼性網膜芽細胞腫)。

遺伝性網膜芽細胞腫の患児のほとんど(米国では80%)の両親に網膜芽細胞腫は見られませんが、受精(妊娠)前に片方の親の卵子か精子に遺伝子変異が発生していたことになります。子どもが遺伝性の網膜芽細胞腫であったとしても、両親ともに腫瘍がなければ、この家族の次の子ども(患児の弟や妹)に網膜芽細胞腫を発症する確率は5%未満です。しかし、遺伝性網膜芽細胞腫の患児の子孫が網膜芽細胞腫になるリスクは約50%あります。この病気の遺伝子型を持っていると、将来、別の種類のがんを発症するリスクも高くなります。

遺伝性網膜芽細胞腫の特徴は以下の通りです。

  • 一般的に複数の腫瘍が存在する
  • 両眼性の腫瘍が多い
  • 身体の他の部位にも腫瘍が存在する可能性がある
  • 将来、別の種類のがんになるリスクが高い

非遺伝性網膜芽細胞腫

網膜芽細胞腫のほとんどの患児(米国では75%)は遺伝性ではありません。その代わり、受精後または出生後のある時点で1つの網膜芽細胞(未熟な細胞)内の一対のRB1遺伝子の両方に変異が起きています。これがどのように、またなぜ起こるのかはわかっていません。非遺伝性網膜芽細胞腫は片方の眼球にだけ生じます(片眼性網膜芽細胞腫)。この患児たちは、別のがんを発症するリスクは高くなく、また、彼らの子孫が網膜芽細胞腫を発症するリスクも他の一般の子どもと同じです。

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13番染色体の異常

一部の子どもは13q(※訳注:13番染色体長腕)欠損あるいは13番染色体(RB1遺伝子がある染色体)のその他の異常を生まれつき持っており、網膜芽細胞腫を発症するリスクが高いです。これらの状態にある子どもが占める割合は網膜芽細胞腫全体のうちのごく一部です。このような遺伝性の場合、網膜芽細胞腫を発症しなくても受診が必要なので、親御さんはそのことを既にご存知のはずです。

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網膜芽細胞腫の症状

網膜芽細胞腫は、通常、定期的な乳児健康診断で医師によって発見されますが、親御さんが以下のような症状に気付く場合もあります。

  • 瞳孔が通常の色(黒)ではなく、白や赤に見える
  • 斜視(眼球が鼻や耳の方を向いてしまう)
  • 弱視
  • 眼が赤く痛みがある
  • 瞳孔が開いている
  • 虹彩(※訳注:瞳孔周囲の円状の薄膜)の色が異なっている

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網膜芽細胞腫の診断

網膜芽細胞腫は眼の検査で見つかります。通常は親御さんや小児科医が瞳孔の白さや斜視に気付きます。この病気は比較的まれなので、患児は網膜芽細胞腫の治療に精通した専門の眼科医に紹介されます。眼球内の腫瘍の広がり具合を明らかにするための画像を撮影するのに、患児は全身麻酔で検査を受ける必要があるかもしれません。また、腫瘍を見つけるために専門医はその他の検査も行います。専門医が眼球と脳の内部の画像を撮るためによく行う検査は以下の通りです。

網膜芽細胞腫と診断された患児には全身的な検査が必要です。何らかの症状や異常が見つかっている場合には、がんが身体の他の部位まで広がっているのかどうかを確かめるための追加検査が必要です。実施する検査は以下の通りです。

網膜芽細胞腫の診断後によく行なわれる他の検査は以下の通りです。

  • 聴力検査
  • 遺伝子検査や遺伝子スクリーニング

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病期分類

網膜芽細胞腫が見つかった後、医師は眼球の腫瘍の大きさと眼球以外における腫瘍の有無を確定します。これは病期分類と呼ばれ、医師が適切な治療計画を立てるのに役立ちます。網膜芽細胞腫には2つの病期分類が使用されます。その1つは眼球や視力を残せる可能性に関係がある、眼球内部の腫瘍の量を評価するためのもので、もう1つは眼球外に存在する腫瘍を評価するためのものです。

眼球内の腫瘍の病期分類には、「眼球内網膜芽細胞腫のための国際分類」が使用されます。この分類では、腫瘍の範囲を示すのにA~Eの文字を使用します。患児の腫瘍が広範囲であるほど進行段階が高くなります。この病期記号によって、最も効果的にがんを治し、かつ、患児の視力を保つための治療法が決まります。

グループA

  • 網膜に限局し、かつ中心小窩(※)から3mm以上、視神経円板(※)から1.5mm以上離れている、小さな腫瘍(直径3mm未満)
    (※訳注:網膜の黄斑部の中心に位置する、高精細な中心視野での視覚に寄与する重要な領域を中心窩と言い、その中心部が中心小窩です。視神経円板は視神経乳頭とも呼ばれ、視神経が網膜に入る点のことです。)

グループB

  • 網膜内のどこかに限局する3mm以上の腫瘍
  • 腫瘍から6mm未満の位置で網膜液を認める

グループC

  • 局所的な硝子体播種または網膜下播種またはその両方が存在する
    (腫瘍からの位置が6mm未満)
  • 硝子体や網膜下の領域に腫瘍の集まりや塊がない

グループD

  • 広範な硝子体播種または網膜下播種またはその両方が存在する
    (腫瘍からの位置が6mm未満)
  • 腫瘍から6mm以上の位置で網膜下液を認める

グループE

  • 下記のような視力喪失の存在あるいは潜在的な可能性が1つ以上ある状態。
  • 前方にある腫瘍
  • 毛様体の中または毛様体上の腫瘍
  • 血管新生緑内障
  • 腫瘍を覆い隠すような硝子体出血または著しい前房出血
  • 眼球癆(※)、または眼球癆になりかかった状態
    (※訳注:眼球癆とは、重篤な疾患、炎症、損傷により、眼が萎縮して機能を失った状態のことです。)
  • 眼窩蜂巣炎などの存在

眼球外の腫瘍を評価するには、いくつかの分類が使用されますが、最も重要な点は眼球外の眼窩や視神経の中へ網膜芽細胞腫が広がってしまったかどうか、それが、脳や他の部位(骨、骨髄あるいは肝臓)に広がってしまったかどうかを知ることです。

米国版の更新時期: 2011年9月
日本版の更新時期: 2012年3月

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