ウィルムス腫瘍などの腎腫瘍の診断

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「ウィルムス腫瘍」は小児の腎腫瘍の中で発生頻度が最も高いもので、「腎芽腫(英語では”nephroblastoma”)」とも呼ばれています。”nephro”は「腎臓」を意味し、”blastoma”は「芽細胞腫」のことで、まだ十分に分化成熟していない胎児性組織で形成された腫瘍です。米国では毎年約500人の子どもがウィルムス腫瘍と診断され、そのうちの約75%が5歳未満です。

ウィルムス腫瘍または他の腎腫瘍と診断された患児は、以下のような症状のうちのいくつかを経験しています。

  • 腹部のしこりや塊(その他の点では健康である)
  • 腹部の痛み
  • 血尿
  • 高血圧
  • 発熱
  • 下痢
  • 体重減少
  • 尿路の感染
  • 貧血
  • 息切れ
  • 一般的な疲労感や体調不良
  • 吐き気や嘔吐(これらは稀です)

小児の腎腫瘍の約15%はウィルムス腫瘍以外の腫瘍です。このようなウィルムス腫瘍以外の腎腫瘍を診断するためには、腫瘍細胞の病理組織学的所見の情報を必要とします。ウィルムス腫瘍とは異なる治療が行われるため、腫瘍を正確に診断することが重要です。

2番目に多い腎腫瘍は「腎明細胞肉腫(CCSK)」です。CCSKの症状、診断のための検査、治療方法はウィルムス腫瘍と良く似ています。CCSKの特徴は以下の通りです。

  • はるかに広範囲に転移が起こる(肺、脳、骨、軟部組織)
  • 増殖と転移がゆっくりしている
  • 治療法は、ウィルムス腫瘍のより進行した病期に対する治療法に似ている

それほど一般的でない腎腫瘍には以下のものがあります。

  • 腎細胞癌
  • 悪性腎ラブドイド腫瘍
  • 先天性間葉芽腎腫
  • その他の腎臓肉腫

がん細胞が体内にあるかどうか、あるとすればどこにあるのかを確かめるための検査や処置はたくさんあります。患児を診断するために用いられる検査の組み合わせは、症状や疑わしいがんの種類で決まります。

一般的に、ウィルムス腫瘍の場合は腫瘍がかなり大きくなってから発見されます。幸い大きくなっても、ほとんどの腫瘍は転移する(体内の他の臓器へと広がる)前に見つかります。多くのがん同様、この腫瘍もかなり大きくなることがあります。腫瘍の平均重量は約500gで、正常な腎臓よりも大きいです。

腎腫瘍を診断し、体内の他部位へ広がっていないかを診断するために、受診歴の確認と視触診に加えて以下のような検査が行なわれます。

臨床検査: 白血球数、貧血(赤血球数の低下)の有無、腎臓がどの程度機能しているかを確認するために血液検査が行われます。

尿検査: 尿中に血液や他の物質が混入していないかを検査します。

画像検査: 腫瘍やその周囲の構造の鮮明な画像を得るために以下のような多くの画像検査をします。

これらの検査によって腫瘍がどこにあるかがわかるので、医師は最良の治療法を選択することができます。診断は、手術で腫瘍の全部または一部を切除し、病理医が顕微鏡で検査すること(病理組織学的診断)で確定します。

患児に危険を及ぼす可能性があるために手術を行なうことが望ましくない場合もあります。こうした場合には、腫瘍をまず小さくして、後でより安全に切除することができるように、化学療法による治療が始まります。

一般的にウィルムス腫瘍の予後は非常に良好です。近年、ウィルムス腫瘍の患児の大多数は治癒しています。米国のウィルムス腫瘍の患児全体の5年生存率は約90%です。これは、ウィルムス腫瘍と診断された患児10人のうち、5年後に9人が生存していることを意味します。この腫瘍は5年経過後にはほとんど再発しないため、5年生存は「治癒した」と考えられる目安です。

ウィルムス腫瘍は主に2種類あります。これらは腫瘍細胞の種類(組織学的所見)に基づいて診断されるもので、治療結果にも影響を及ぼします。腫瘍全体または一部が切除された後、腫瘍の種類(※訳注:組織型)を病理医が診断します。

予後良好な組織型のウィルムス腫瘍:

予後良好な組織型とは、退形成(がん細胞の核の変形)がなく、治癒の可能性が高いことを意味します。米国のウィルムス腫瘍の約92%は良好な組織型です。

予後不良な組織型のウィルムス腫瘍:

予後不良な組織型とは、細胞所見がより異常で、がん細胞の核(細胞のDNAを含んでいる部分)が非常に大きく、かつ変形していることを意味します。これを退形成型(Anaplasia)と呼びます。退形成型は化学療法に対する抵抗力が強いため、治癒の可能性が低くなります。

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ウィルムス腫瘍の病期

ウィルムス腫瘍の診断後、医師は以下の点から腫瘍がどれくらい進行しているかを判定する必要があります。

  • どの位の大きさか
  • どこまで広がっているか
  • 他の組織へ浸潤しているかどうか

これは腫瘍の「病期分類」と呼ばれます。病期分類によって、治療チームは化学療法手術放射線治療を組み合わせた最も効果的な治療法を決定することができます。病期はさらに治癒の見込みに関する情報も与えてくれます。

ウィルムス腫瘍の進行度を説明するのに用いられた病期分類システムは、米国のウィルムス腫瘍研究会(NWTS)によって作成され、小児腫瘍研究グループ(Children’s Oncology Group、略称:COG)の腎腫瘍委員会によって改定されたものです。NWTS/COG病期分類システムはローマ数字のⅠからⅤまで(1から5まで)を使用してウィルムス腫瘍の病期を表しています。

病期Ⅰ:

腫瘍が腎臓にのみ存在し、手術で完全に切除された状態です。腎臓の隣の血管まで浸潤しておらず、腫瘍を包む被膜は手術中に壊れていません。

米国ではウィルムス腫瘍全体の約40%が病期Ⅰに該当します。

病期Ⅱ:

腫瘍が腎臓を越えて成長していますが、残存する腫瘍細胞がなく、手術で完全に切除されています。以下のような特徴が1つ以上存在します。

  • 腫瘍が腎臓を越えて近くの脂肪組織まで進展しているが、完全に切除された状態。
  • 腫瘍が腎臓の近くの血管まで進展しているが、切除された状態。

米国ではウィルムス腫瘍全体の約20%が病期Ⅱです。

病期Ⅲ:

この病期は、ウィルムス腫瘍が完全に切除できなかったことを表しています。手術後に残っているがんは腹部に限局しています。以下のような特徴が1つ以上存在します。

  • 腫瘍は、胸腔内のような離れた部位のリンパ節にはないが、腹部や骨盤内のリンパ節に広がっている状態。
  • 手術で切除した組織の断端に腫瘍細胞が存在しており、手術後に腫瘍の一部がまだ残っている状態。
  • 手術前や手術中の所見で腫瘍細胞が腹腔内に「あふれている」状態。(※訳注:腹膜播種と呼ばれる、腹膜に腫瘍が播種している状態のことです。)
  • 腫瘍が近くにある重要な臓器に浸潤し、また、手術でそれを完全に切除することができない状態。
  • 腫瘍の付着(腫瘍組織片)が腹腔の内側に沿って見つかる状態。

米国ではウィルムス腫瘍全体の約20%が病期Ⅲです。

病期Ⅳ:

腫瘍が血流によって肺、肝臓、骨、リンパ節のような腎臓から遠く離れた他臓器へと広がっています。

米国ではウィルムス腫瘍全体の約10%が病期Ⅳです。

病期Ⅴ:

診断の時点で腫瘍が両方の腎臓にあります。

病期Vの腫瘍のほとんどは、両方の腎臓にある未熟で異常な組織(※訳注:ウィルムス腫瘍の前がん病変である造腎遺残のこと)から発生しており、片方の腎臓からもう片方の腎臓へ転移したものではありません。その治療は手術後に進行した病期であると判定された腎腫瘍に準じて行われます。

米国ではウィルムス腫瘍全体の約5%が病期Vです。

米国版の更新時期: 2011年7月
日本版の更新時期: 2012年3月

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